溶接工の平均年収は約452万4,500円だ(厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査、職種小分類「金属溶接・溶断従事者」、男女計・産業計)。同じ令和6年の給与所得者全体の平均は478万円(国税庁 民間給与実態統計調査)で、溶接工はこれをやや下回る。ただし両者は母集団も算定方法も異なる別統計のため、単純な高低の比較はできない。製造業の現場職として低い水準ではない。

ただし、平均という一つの数字は実態をかなり丸めている。年齢で250万円以上、働く現場で100万円以上の差が出るからだ。このページは、その差を出どころのはっきりした数字だけで分解する。作れない数字は、作れないと書く。

この記事のポイント

  • 平均年収は約452万4,500円(厚労省 令和6年賃金構造基本統計)。給与所得者全体(国税庁 令和6年・478万円)をやや下回るが、両者は別統計のため単純比較はできない。
  • 年齢で大きく動く。10代の約254万円から40代前半の約531万円まで、ピークと底で270万円超の差がある(厚労省 令和6年賃金構造基本統計)。
  • 「資格別の年収」は政府統計に存在しない。資格手当は会社ごとの制度で、政府データから資格別の金額は出せない。
  • 「都道府県別の溶接工年収」も公式の賃金統計には無い。ネットの県別ランキングは按分推計か求人賃金ベースで、実測ではない。
  • 年収を押し上げるのは、資格そのものより特殊溶接の技能・上位資格・管理職への移行だ。

主要データ

  • 平均年収 約452万4,500円(厚労省 令和6年賃金構造基本統計調査、職種小分類「金属溶接・溶断従事者」、男女計・産業計・企業規模10人以上)
  • 初任給(未経験)約20万5,900円/月(厚労省 職業情報提供サイト jobtag)
  • 年齢別ピーク 40〜44歳で約531万円/底は〜19歳の約254万円(厚労省 令和6年賃金構造基本統計)
  • 参考:給与所得者全体の平均 478万円(国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査)※賃金構造基本統計とは母集団・算定が異なる別統計

数字はいずれも調査年で動く。最終確認日は末尾に置いた。

はじめに|この数字がどこから来ているか

溶接工の年収を語るとき、出どころの違う数字が混ざりやすい。ここで先に整理しておく。読み違えを避けるためだ。

  • 全国平均と年齢別の推移は、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に基づく。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算する。なお、この職種の正式な分類名は「金属溶接・溶断従事者」だ。本記事では一般的な呼称として「溶接工」を使うが、数値はこの分類(男女計・産業計・企業規模10人以上)の実数に基づく。「職種小分類『溶接工』」と書く記事を見かけるが、令和6年の統計に「溶接工」という分類名は無い。
  • 資格別の年収を出せる政府統計は無い。賃金構造基本統計に資格軸はなく、あるのは年齢・勤続年数・企業規模・地域だけだ。だから「この資格で年収がいくら」という政府発の数字は存在しない。
  • 都道府県別の溶接工の年収も、公式の賃金統計には無い。職種小分類と都道府県を掛け合わせた賃金は公表されていない。出回っている県別ランキングは、各県の平均賃金から按分した推計か、求人票から集計した求人賃金のどちらかだ。賃金構造の実測ではない。

この前提を踏まえて、以下では出せる数字と出せない数字を分けて示す。

年齢別の年収

年齢で年収は大きく動く。下表は厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査(職種小分類「金属溶接・溶断従事者」、男女計・産業計・企業規模10人以上)の実数から、年収(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額)を計算したものだ。

年齢

平均年収

〜19歳

約254万円

20〜24歳

約322万円

25〜29歳

約370万円

30〜34歳

約421万円

35〜39歳

約460万円

40〜44歳

約531万円

45〜49歳

約522万円

50〜54歳

約506万円

55〜59歳

約518万円

60〜64歳

約445万円

65〜69歳

約418万円

70歳〜

約342万円

カーブには癖がある。10代の約254万円から右肩上がりで伸び、ピークは40〜44歳の約531万円だ。意外に思うかもしれないが、55〜59歳(約518万円)ではない。40代前半で頂点を打ち、その後は50代まで約500万円台で高止まりする。30代後半で全体平均の約452万円を超え、40代から50代がいちばん厚い。60歳で再雇用に移ると一段下がるが、それでも65〜69歳で約418万円と、底ではない。

資格・スキル別の差

ここが、多くの記事が踏み外すところだ。先に結論を書く。資格別の年収を政府データから出すことはできない。賃金構造基本統計に資格の集計軸が無いからだ。「JIS溶接技能者なら年収◯万円」という数字を見かけたら、その出どころは政府統計ではない。

そのうえで、現場で起きていることは整理できる。資格が効くのは、額が直接決まるからではなく、入れる現場と任される仕事が変わるからだ。

教科書的には「資格手当が付くから収入が上がる」と説明される。だが現場の実態はもう少し構造的だ。理由は二つある。一つは、有資格者しか入れない高単価の案件があること。もう一つは、溶接は外観だけで品質を判断できないため、元請けが資格という客観的な裏づけで人を配置すること。つまり資格は、手当そのものより「単価の高い仕事への入場券」として効く。

資格手当の有無や金額は会社ごとに違う。一律の相場は無い。求人を見るときは、資格手当・残業手当・危険手当が別建てで付くかを個別に確認するのが現実的だ。

地域別の年収

繰り返すが、職種小分類(金属溶接・溶断従事者)と都道府県を掛け合わせた公式の賃金統計は無い。だから「県別の溶接工年収ランキング」を厳密な実測として示すことはできない。

参考になるのは、求人票から集計した求人賃金ベースの県別データだ。求人ボックスの求人統計では、最も高いのが東京都の約438万円、最も低いのが青森県の約322万円で、その差は約116万円とされる。ただしこれは募集時の提示額の集計であって、実際の支給額(賃金構造の実測)とは性質が違う。水準も賃金構造の平均より低めに出る。

傾向として読めるのは、製造業が集積する地域ほど単価が高いことだ。自動車の愛知、重工業の大阪、半導体投資が続く熊本などは相対的に高い側にある。逆に大規模な製造拠点が少ない地域は伸びにくい。地域差は「製造業の集積」とほぼ重なる、と理解しておくのが実態に近い。

手取り・初任給・独立・年収1000万の現実

検索でよく入る個別の論点を、煽らずに条件だけ整理する。

初任給 未経験の初任給は月約20万5,900円(jobtag)。高専・短大卒の平均初任給を下回る水準で、入口は高くない。伸びるのは経験と技能を積んでからだ。

手取り 額面から社会保険料と税が引かれる。額面450万円なら、手取りはおおむね年350万円前後が目安になる。扶養や住む自治体で前後する。額面と手取りの差を頭に入れておくと、求人の見え方が変わる。

独立(一人親方) 定年が無く、実力次第で会社員より上を狙える。ただし前提は重い。溶接機・運搬車などの開業資金に数百万円かかると言われ、何より案件を取り続ける営業力が要る。技能だけでは続かない。独立は収入の上限を外す代わりに、安定を手放す選択だ。

年収1000万 一般的な溶接工の延長線上には無い。届くのは、水中溶接などの特殊作業、難度の高い専門溶接、あるいは親方として複数の案件と人を回す立場など、限られたケースだ。普通に勤めて自動的に届く水準ではない。ここを誇張する情報には注意したい。

年収を上げる道筋

年収を上げたいなら、資格の数を増やすより、溶接できる範囲を広げるのが先だ。理由は単純で、年収を分けているのが「何を溶接できるか」だからだ。

  • 難度の高い工法を持つ TIG・厚板・高合金・特殊材など、扱える幅が単価に直結する。
  • 上位資格で裏づける JIS溶接技能者で技量を証明し、さらに溶接管理技術者で管理側へ。資格は単価の高い仕事への入場券になる。
  • 管理・監督へ移る 施工管理・品質管理など、作業者より処遇のレンジが上の職務へ移ると、収入の天井が変わる。

どれも一足飛びには進まない。だが方向は共通している。代わりの利きにくい技能を、客観的に示せる形で積み上げることだ。

出典・集計方法・最終確認日

  • 平均年収・年齢別:厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査「(職種)第5表 職種(小分類)、年齢階級別 きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」、職種小分類「金属溶接・溶断従事者」(一般に「溶接工」と呼ばれる)、男女計・企業規模計(10人以上)。政府統計コード00450091。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出(MONOSCOPE編集部による導出値)。取得日2026-06-25
  • 初任給:jobtag「溶接工」
  • 全産業比較(参考):国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査(賃金構造基本統計とは母集団・算定が異なる別統計)
  • 県別(求人賃金ベース):求人ボックス「溶接の仕事の年収・時給・給料」
  • 集計:MONOSCOPE編集部
  • 最終確認日(lastVerified):2026-06-25 ※公開時に更新