溶接欠陥 種類とは、溶接部に発生する不具合を形態・発生位置・発生メカニズムで分類したものであり、JIS Z 3001等の規格で定義される。外部欠陥(アンダーカット・オーバーラップ等)と内部欠陥(ブローホール・溶込み不良等)に大別され、検出方法・原因・補修手順が異なる。
主要データ
- JIS溶接技能者評価試験 受験者数:104,035人(日本溶接協会、2022年)
- 同試験 合格者数:80,896人(合格率77.75%、2022年)
- 方法別受験者(2022年):手溶接33,486人/半自動43,694人/ステンレス鋼21,656人
外観は合格でも内部で落ちる試験の現実
溶接技能者試験で不合格になる受験者の多くは外観検査ではなく破壊試験または放射線透過試験で落ちるのであり、ビード外観が滑らかで継手形状も問題なく見えるにもかかわらず、内部に気孔や融合不良が潜んでいれば不合格となるため、この見た目と中身のずれが、溶接欠陥を種類ごとに把握しておく必要を現場に突きつけている。 日本溶接協会が実施するJIS溶接技能者評価試験では、2022年に受験者104,035人のうち合格者80,896人で合格率は77.75%だった(https://www.jwes.or.jp/qualifications/wo/certification/)。不合格者が約2割に達する背景には、外観では判別できない内部欠陥の見逃しだけでなく、電流や運棒速度のわずかなずれが重なり、結果として破壊試験やRTで表面化する不具合が含まれている。 分類の意図は明快である。検出方法と原因特定を早めるためだ。アンダーカットのような外部欠陥は目視で発見しやすいが、スラグ巻込みや融合不良は放射線透過試験(RT)や超音波探傷試験(UT)が前提となり、欠陥の種類が定まれば、施工パラメータのどこを修正すべきかも絞り込みやすくなる。
外部欠陥と内部欠陥──検出手段の違いが運用を分ける
溶接欠陥は発生位置によって外部欠陥と内部欠陥に大別され、外部欠陥はビード表面または継手形状に現れる不具合であるため目視検査または寸法測定で検出でき、代表例としてアンダーカット・オーバーラップ・ビード形状不良・割れ(表面割れ)が挙げられる一方、内部欠陥は表面が整っていても内部に潜むため、見た目の良否だけでは判断が完結しない。 内部欠陥は溶接金属または熱影響部の内部に潜む不具合であり、非破壊検査または破壊試験でしか検出できない。代表例はブローホール(気孔)・スラグ巻込み・融合不良・溶込み不良・割れ(内部割れ)である。建築鉄骨や圧力容器など構造物の用途によっては、内部欠陥の検出が法令で義務付けられており、放射線透過試験または超音波探傷試験が必須となっている。 外部欠陥と内部欠陥を混同すると、検査計画の段階で手戻りが生じやすく、目視検査だけで合格とした継手が後の放射線透過試験で大量の気孔を指摘されて全線再溶接となるという回り道は珍しくないうえ、JIS Z 3106(非破壊試験)やJIS Z 3104(放射線透過試験)は欠陥種類ごとの検出能力と限界を定めているため、施工前に参照すべき基準として機能している。
アンダーカット──ビード趾端部に沿った溝状欠陥
アンダーカットはビード趾端部(母材とビードの境界線)に沿って母材が削り取られ、V字状またはU字状の溝が残る外部欠陥であり、溶接中にアークが母材を溶かし過ぎたうえ、溶融池が重力で垂れ落ちて溝が埋まらないまま凝固したときに発生する。 発生条件は比較的はっきりしている。電流が高すぎる、または運棒速度が遅すぎると入熱過多となり、アンダーカットが出やすい。さらに立向・横向姿勢では重力の影響が大きく、下向姿勢よりも発生リスクが高まる。JIS溶接技能者試験では、アンダーカット深さが0.5mm超で不合格となる基準が一般的であり、外観検査の主要チェック項目となっている。
オーバーラップ──母材上に溶融金属が乗り上げる欠陥
オーバーラップは溶融金属が母材に融合せず、母材表面に乗り上げた状態で凝固する外部欠陥であり、ビード端部が母材と重なって見えても金属学的には一体化していないため、応力集中点となり、疲労破壊の起点へつながるおそれがある。 原因はアンダーカットと対照的である。電流が低すぎる、または運棒角度が不適切で溶融池が広がり過ぎると、母材との融合が不十分なまま凝固してオーバーラップが生じる。入熱不足が主因であり、電流値と運棒速度のつり合いをどう取るかが対策の中心となる。
内部欠陥──非破壊検査で初めて見える不具合
内部欠陥は溶接金属または熱影響部の内部に潜むため外観検査では発見できず、放射線透過試験(RT)では気孔やスラグ巻込みが黒い影として写る一方、超音波探傷試験(UT)では融合不良や割れがエコー信号の欠落または異常波形として現れることから、同じ内部欠陥でも検査法ごとに見え方が異なり、読み取り側の理解不足が判定差につながる。 内部欠陥の検出は、試験方法の選定だけで終わらない。撮影条件や探傷条件も結果を左右する。JIS Z 3104に規定される透過写真の濃度範囲や像質計(IQI)の識別本数を満たさない撮影では、小径の気孔や薄いスラグ巻込みを見逃すリスクがあり、検査を実施したという事実だけで品質が担保されるわけではない。
ブローホール──溶接金属内部の球状気孔
ブローホールは、溶融金属が凝固する際に内部へ閉じ込められたガスが球状の空洞を形成する内部欠陥であり、水素・窒素・一酸化炭素が主な原因ガスとなって、母材表面の錆・油・水分、または被覆剤・フラックスから発生したガスが溶融池に溶け込むことで生じる。 半自動溶接(MAG/MIG)では、シールドガス流量が不足すると大気中の窒素が溶融池に侵入し、ブローホールが多発しやすい。被覆アーク溶接では、棒端部の被覆剤が吸湿していると水素ガスが発生し、微細な気孔が連続するピット状の欠陥となる。被覆アーク溶接棒は使用前に乾燥炉で再乾燥する運用が標準だが、その工程が省略されて不良率が上がるという流れは珍しくない。
スラグ巻込み──フラックスや酸化物が溶接金属に残留
スラグ巻込みは、被覆剤やフラックスが溶融して生成するスラグ(非金属介在物)が溶接金属内部に閉じ込められる内部欠陥であり、多層盛では前層のスラグを除去しないまま次層を重ねると、層間に残留したスラグが線状または塊状の欠陥として残る。 放射線透過試験では、スラグ巻込みは気孔よりも濃度が低い(X線吸収が少ない)ため、不鮮明な影として写る。しかも形状が不定形で気孔と区別しにくい場合があり、そのときは超音波探傷試験で補完するか、破壊試験で断面を研磨して確認する手順が必要となる。
融合不良と溶込み不良──母材と溶接金属の未接合
融合不良は溶接金属と母材、または溶接金属同士が金属学的に接合していない欠陥であり、開先側壁・ルート部・層間で発生するのに対し、溶込み不良は開先底部(ルート部)で母材が溶融せず溶接金属が母材に到達していない状態を指すため、発生位置と原因は異なるものの、どちらも継手強度を大きく低下させる重大欠陥として扱われる。 融合不良は電流不足・運棒角度不良・ビード配置ミスが主因である。開先角度が狭すぎると電極先端が開先底部に届かず、側壁との融合が不十分になる。溶込み不良はルート間隔(ルートギャップ)が狭すぎる、または裏当て金の配置不良で溶融池が裏面まで貫通しない場合に発生する。 超音波探傷試験では、融合不良は界面エコーの増大または欠落として検出されるが、放射線透過試験では融合不良の検出能力が低く、検査法の選定を誤ると欠陥の存在そのものを見落としかねないため、融合不良が疑われる継手ではUTを優先するか、破壊試験で断面マクロ組織を確認する判断が実務上の選択肢となる。
割れ──高温割れと低温割れの発生機構の違い
割れは溶接欠陥の中でも最も重大な不具合に位置付けられ、継手の使用を即座に禁止する判定基準となることが多い。高温割れと低温割れに大別され、発生温度も原因元素も対策も異なるため、同じ割れとして一括処理すると対処の方向を誤りやすい。 高温割れは凝固過程または凝固直後の高温状態で発生する割れであり、凝固割れ・液化割れ・高温割れの三種に細分される。硫黄・リンなどの不純物が粒界に偏析し、そこへ凝固時の収縮応力が加わると粒界が引き裂かれる。ステンレス鋼や高張力鋼では、溶接金属の化学成分と冷却速度の組み合わせが高温割れリスクを左右する。 低温割れは溶接後、常温付近まで冷却した後に発生する遅れ割れであり、水素割れとも呼ばれる。溶接金属または熱影響部に侵入した水素が、残留応力と組織の硬化(マルテンサイト組織)と組み合わさって割れを引き起こす。施工直後には検出されないことも多く、数時間から数日後に発生するため、非破壊検査は溶接後24時間以上経過してから実施する運用が一般的となっている。
欠陥種類ごとの検出手段と補修判定の境界
溶接欠陥の検出手段は欠陥種類によって使い分ける必要があり、外部欠陥(アンダーカット・オーバーラップ・ビード形状不良)は目視検査と寸法測定で対応できる一方、内部欠陥(気孔・スラグ巻込み・融合不良・溶込み不良)は非破壊検査が前提となるため、放射線透過試験(RT)・超音波探傷試験(UT)・磁粉探傷試験(MT)・浸透探傷試験(PT)を、欠陥の種類・位置・母材材質に応じて選択しなければならない。 割れは外部割れ(表面割れ)と内部割れに分かれ、外部割れは浸透探傷試験または磁粉探傷試験で検出できるが、内部割れは超音波探傷試験または放射線透過試験が必要だ。割れは発見した時点で不合格となり、補修溶接の可否は母材の材質・板厚・構造物の用途で判断される。高張力鋼や低合金鋼では、補修溶接前に予熱・後熱が必須となり、補修手順書の作成と承認が求められる。 欠陥の許容基準はJIS Z 3104(放射線透過試験)やJIS Z 3060(超音波探傷試験)に規定されているが、構造物の用途によっては独自の厳格基準が適用される場合があり、圧力容器・原子力機器・航空機部品では微小な気孔でも不合格となる一方、建築鉄骨や一般機械では一定サイズ以下の気孔が許容されるため、欠陥種類と許容基準の組み合わせを施工前に確認しておかなければ、検査段階で全線再溶接に至るリスクが残る。
施工パラメータと欠陥種類の因果関係
溶接欠陥の種類ごとに発生原因となる施工パラメータの組み合わせは異なっており、アンダーカットは電流過大・運棒速度過小が主因である一方、オーバーラップは電流不足・運棒角度不良が主因となり、ブローホールは母材表面の汚れ・被覆剤の吸湿・シールドガス流量不足、スラグ巻込みは前層スラグの除去不良・開先角度不足・電流不足が原因となるため、欠陥名だけを見て対策を決めるのではなく、施工条件の組み合わせとして読み解く必要がある。 融合不良は電流不足・運棒角度不良・ビード配置ミスが主因であり、溶込み不良はルート間隔不足・電流不足・開先形状不良が主因だ。高温割れは化学成分の偏析と冷却速度が原因であり、低温割れは水素侵入・残留応力・硬化組織の三要素が揃った場合に発生する。 電流設定だけで全てを説明することはできない。電流を上げればアンダーカットが減るという単純な整理では足りず、上げすぎれば溶融池が広がり過ぎて別の欠陥(ブローホール・スラグ巻込み)が増えることもあるため、電流・運棒速度・シールドガス流量・開先形状の四要素をどう釣り合わせるかが問われ、その感覚は数値の暗記だけでは固まらず、試験片での試し溶接と欠陥検出の反復を通じて形成される技能となっている。
欠陥種類の記録と再発防止──データが次の施工を変える
溶接欠陥が発生した場合は、欠陥種類・発生位置・検出方法・原因推定・補修内容を記録し、次の施工に反映する仕組みを回す必要があり、記録を残さない現場では同じ欠陥が繰り返し発生して検査コストと補修工数が積み上がるため、品質管理の差は最終的に記録運用の精度として表れやすい。 欠陥種類ごとの発生頻度を集計すると、施工者ごと・溶接法ごと・母材ごとの傾向が見えてくる。ある施工者がアンダーカットを頻発しているなら、電流設定と運棒速度の指導が必要となる。特定の母材でブローホールが多発しているなら、表面処理手順の見直しまたはシールドガス流量の調整が対策候補となる。 JIS Z 3410(溶接施工方法の確認試験方法)では、溶接施工要領書(WPS)の妥当性を事前に確認する手順が規定されており、試験溶接で欠陥が発生した場合は施工パラメータを修正してから本溶接に移る。欠陥種類を正しく分類し、原因を施工条件に遡及できる記録体制があれば、次の継手で同じ失敗を繰り返す可能性は下がる。欠陥が出たときに施工条件のどこを疑うかという判断基準を持つことが、溶接品質を安定させる近道となる。
出典・集計方法・最終確認日
- 出典: 日本溶接協会 JIS/WES 溶接技能者評価試験(2022年)— https://www.jwes.or.jp/qualifications/wo/certification/
集計方法: 本記事で示した受験者数・合格者数・合格率は、日本溶接協会が公表する2022年の延べ数(新規受験者+更新受験者の合計)を使用した。方法別受験者数は同じく2022年の内訳である。
最終確認日: 2026-07-13









