溶接記号は、図面上で「どこに・どんな形状で・どんな方法で」溶接するかを指示するための記号であり、日本では JIS Z 3021:2016 に規定されている。記号は「矢」「基線」と、そこに載せる「基本記号」「補助記号」「寸法」で構成される。読み方の最大のルールは1つ——基本記号が基線の下側にあれば矢の側(手前側)を、上側にあれば矢の反対側(向こう側)を溶接する。本記事では記号の構成、全24記号の一覧、寸法の読み方、現場でよくある誤読までを整理する。個々の記号の詳細(意味・適用場面・書き方、記号によっては寸法記入例・FAQ)は溶接記号 早見ツールの各記号ページで確認できる。
溶接記号の構成——基線・矢・尾
溶接記号の骨格は「説明線」と呼ばれ、基線・矢・尾で構成される。尾は必要がなければ省略できる(JIS Z 3021)。
- 基線: 通常は水平線で引く。この線の上下どちらに基本記号を置くかが、溶接する側の指示になる。
- 矢: 溶接部を指す線。基線に対してなるべく60°の直線とする。レ形・K形・J形など開先を取る側を明示する必要がある記号では、矢を折れ線にして開先を取る面に先端を向ける。
- 尾: 溶接方法や特別指示事項を書き添えるための開いた線。指示がなければ省略する。
読み方の基本ルール——基線の上下
溶接記号の誤読で最も多いのが、基線の上下の取り違えだ。ルールは次のとおり。
基本記号の位置 | 溶接する側 |
|---|---|
基線の下側 | 矢の側(手前側) |
基線の上側 | 矢の反対側(向こう側) |
両面から溶接する場合(X形・K形・H形など)は、基線の上下両方に記号を配置する。 |
全24記号一覧
MONOSCOPEの溶接記号 早見ツールに収録している全24記号の一覧を示す。記号名から、各記号の意味・適用場面・書き方と注意点(記号によっては寸法記入例・FAQ)をまとめた個別ページに移動できる。
開先溶接(10記号)
記号名 | 意味の要約 |
|---|---|
母材端面をほぼ平行に突き合わせる最も単純な突合せ | |
両母材の端面をV字形に削る最も基本的な開先 | |
片方の母材だけを斜めに削る片側開先 | |
両母材端面を曲面状に削り溶着量を抑えるU字形開先 | |
片方の母材だけをJ字形(曲面)に削る開先 | |
表裏両面にV形開先を取り両面から溶接する形状 | |
片方の母材の表裏にレ形開先を取り両面溶接 | |
表裏両面にU形開先を取る極厚板向けの両面溶接 | |
曲面同士のラッパ状すき間を溶接する形状 | |
平面と曲面のフレア状すき間を溶接する形状 |
すみ肉溶接(2記号)
記号名 | 意味の要約 |
|---|---|
直交する2面の隅に三角断面のビードで溶接 | |
一定間隔で断続的に行うすみ肉溶接 |
プラグ・スロット溶接(2記号)
スポット・シーム溶接(2記号)
肉盛・裏溶接(2記号)
補助記号(全周・現場)(2記号)
表面形状・仕上げ(4記号)
記号名 | 意味の要約 |
|---|---|
溶接部の表面を平らに仕上げる補助記号 | |
溶接部の表面を凸形に仕上げる補助記号 | |
溶接部の表面を凹形に仕上げる補助記号 | |
仕上げ方法をG・M・C・Pの記号で指示 |
寸法の読み方——数値の位置で意味が変わる
溶接記号には寸法を併記できる。数値は記入する位置によって意味が決まっており、代表的な記号は次のとおり(JIS Z 3021)。
- S: 溶接部の断面寸法(開先深さ、すみ肉の脚長、プラグ穴の直径など)。基本記号の左側に記入する。
- R: ルート間隔。
- A: 開先角度。
- L: 溶接長さ(断続すみ肉溶接の溶接長さ、スロット溶接の溝の長さなど)。
- n: 溶接の数(断続すみ肉・プラグ・スロット・スポットなど)。
- P: 溶接間のピッチ。
- T: 特別指示事項(J形・U形のルート半径、溶接方法など)。尾に記入する。 断続すみ肉溶接やスロット溶接では、溶接長さとピッチ(必要に応じて溶接の数)を組み合わせて指示する。具体的な記入例は各記号の個別ページ(例: すみ肉溶接)に「寸法記入例」として掲載している。
補助記号——表面形状・仕上げ・全周・現場
基本記号(溶接部の形状)に加えて、施工条件や仕上がりを指示する補助記号がある。
- 表面形状: 平ら・凸形・凹形など、ビード表面の仕上がり形状を指示する。
- 仕上げ方法: チッピング・研削など、表面の仕上げ手段をG・M・C・Pの記号で指示する。
- 全周溶接: 基線と矢の交点に円を付け、部材の全周にわたる溶接を指示する。
- 現場溶接: 旗印で、工場ではなく据付現場での溶接を指示する。
出典・最終確認日
- JIS Z 3021:2016「溶接記号」(説明線の構成・基線の上下ルール・基本記号・寸法記号の規定)
- 日本溶接協会 溶接情報センター「接合・溶接技術Q&A」(参照解説)
- 集計・構成: MONOSCOPE編集部
- 最終確認日: 2026-07-08









