値上げ通知の裏を、公表値で取る。
製品の指数から始めて、国内の材料、水際と為替、国際相場へと一段ずつさかのぼる。各段では同じ期間に何が動いたかを並べるだけに止め、どれがどれを動かしたかは判定しない。値は公表元から月に2回取り込み直し、すべての数値に「どの月の値か」を添える。
要点
- PRODUCT溶接棒の指数は2026年7月に123.9(2020年平均=100)、2025年7月から+0.2%。
- IMPORT & FX直近12か月(2025年7月〜2026年7月)の円建て変化+10.7%の内訳は、ドル要因+0.4%・為替要因+10.3%。
- GLOBAL国際相場の局面は上昇・減速中(2026年7月の前年同月比+0.4%、前月は+7.9%)。
川上から川下へ(4段を1枚で)
4本とも同じ基準にそろえた指数。線の色は段の色と同じで、上から順に国際相場・輸入・国内の材料・製品にあたる。同じ画面に並べているだけで、線どうしの関係は判定しない。
製品の公表指数は上がっているか
溶接棒の国内価格指数
溶接棒の指数は2026年7月に123.9(2020年平均=100)。2025年7月から+0.2%、2020年平均から+23.9%。
出荷段階の生産者価格の指数であり、実売価格ではない。商社・販売店を経た取引条件、数量、納期による差は含まない。
国内で調達する材料はどう動いたか
国内の材料(線材・鋼線・鉄屑・事業用電力)
高炉の経路(鉄鉱石・原料炭)と電炉の経路(鉄屑)は別々に動く。事業用電力は工場側のコストの参考として並べている。系列ごとに収録の始まる月が違う。
同じ12か月(2025年7月〜2026年7月)で、国内の材料のうち最も動いたのは鉄屑(+31.9%)。事業用電力(+6.9%)、線材(+0.8%)と続く。
輸入段階ではいくらで、為替はどれだけ効いたか
為替 USD/JPY
破線は2020年の月中平均の平均値。輸入物価の円ベースはこの月中平均の仲値で換算されている。
円ベースを契約通貨ベースで割った比。2020年平均を100とした指数どうしの比であり、2020年以降の為替変動の累積にあたる。日本銀行はいずれの品目も同じ月中平均の仲値で円換算しているため、品目が違ってもこの比はほぼ同じ水準になる。
鉄鉱石の輸入物価は2026年7月に円ベース169.6、契約通貨ベース111.3(2020年平均=100)。比は1.52倍で、2020年以降の為替変動の累積にあたる。直近12か月の円建て変化+10.7%の内訳は、ドル要因+0.4%・為替要因+10.3%。
世界の相場はどう動いたか
3素材の比較(同じ月を起点にそろえる)
起点の月を100として、3素材の国際価格を同じものさしで並べる。素材ごとに振れ幅の大きさが違うことを見るための図であり、水準の高低を比べるものではない。
国際価格は2021年8月の162.1 米ドル/トンから2026年7月に-37.3%。同じ期間に溶接棒の指数は+19.2%。
値上げ通知が来たら見る順番
上の4段と同じ順に読む。ここに数値は含まない。数値は各段のカードとチャートで確かめる。
- 製品の指数を見る通知に書かれた材料がどの品目に当たるかを決め、その品目の国内の指数を最新月まで追う。あわせて、通知の対象期間と契約の改定時期が重なっているかを契約書で確かめる。
- 国内の材料を見る製品の一段上、国内で調達する材料の指数を同じ期間で並べる。材料ごとに動きの幅は違うため、どれが最も動いたかまで見てから次へ進む。
- 水際と為替を分ける輸入段階の指数は円ベースと契約通貨ベースの両方が公表されている。両者を並べ、同じ期間の円建ての変化を外貨建ての変化と為替の変化に分けて確かめる。
- 世界の相場を見る最後に国際相場そのものを、高値をつけた月からの動きとして見る。ここから先、個々の取引条件や在庫の状況は公表統計では追えない。
価格協議に関する制度
2026年1月1日、下請法は中小受託取引適正化法(取適法)に変わった。この改正で、価格協議の求めに応じないまま一方的に代金を決めることが、禁止される行為として明記された。相場の水準がどうであるかと、協議の求めに応じる義務があるかどうかは、別の論点として扱う。
あわせて中小企業庁は、2021年9月から毎年9月と3月を価格交渉促進月間と定めている。月間の後にはフォローアップ調査が行われ、状況の芳しくない発注者には大臣名で指導・助言が出される。交渉をいつ持ちかけるかを考えるとき、この時期は一つの目安になる。
制度の内容は一次情報で確かめる。公正取引委員会「中小受託取引適正化法」リーフレット / 中小企業庁(ミラサポplus)中小受託取引適正化法の解説 / 中小企業庁 価格交渉促進月間・フォローアップ調査
示せないこと
- 溶接棒・溶接ワイヤの実売価格。ここで扱うのは出荷段階の生産者価格の指数であり、商社・販売店を経た取引価格ではない。
- シールドガス(アルゴン・炭酸ガス)の価格。対応する公表系列を持っていない。
- 原料炭の銘柄別価格。輸入物価指数は品目単位の指数であり、銘柄までは分解できない。
- 輸入プレミアム。地金の受渡条件ごとの上乗せ分は、ここで使う公表系列に含まれない。
- 相場と製品価格の因果関係。系列は並べて示すだけで、どちらがどちらを動かしたかは判定しない。
この数字の読み方
IMF の一次産品価格と、取引所で見る価格は何が違うのか
ここで使う国際価格は、国際通貨基金が公表する一次産品価格の月次系列である。取引所で日々売買される値段そのものではなく、月単位でならした指標として公表されている。日々の値動きを追う用途には向かず、月ごとの水準を他の系列と突き合わせるための目盛りとして使う。
月次の平均値と、日々動く値段はどう違うのか
本ページの系列はすべて月次である。月の途中で大きく上下しても、月次の値にはならされた結果だけが残る。したがって、月次の系列が横ばいでも、その月の中では大きく振れていた可能性がある。単月の値だけで水準を語らず、前後の月と並べて見る。
国際価格と輸入物価指数で、最新の月がずれて見えるのはなぜか
日本銀行の輸入物価指数のうち、アルミニウム地金とニッケル地金は国際通貨基金の一次産品価格を採用しており、アルミは2か月前、ニッケルは2か月から3か月前の平均値を当てている。同じ月に並べても、輸入物価指数側にはさかのぼった時点の価格が入る。比べるときは、どの月の値かを両方について確かめる。
米ドル/トンと円/kg はどう換算しているのか
国際価格に同じ月の月中平均の為替レートを掛け、重量の単位をトンからキログラムに直している。日本銀行が輸入物価指数の円ベースを月中平均の仲値で換算しているのと同じ方式にそろえてある。両方の系列に同じ月がそろわない月は換算せず、値を出さない。
指数と価格の水準は何が違うのか
企業物価指数は、基準となる年の平均を100として、そこからの変化の度合いを示す。したがって指数の数値そのものは金額ではなく、品目どうしの価格の高低を表すものでもない。金額として読めるのは、米ドル/トンや円/kgで示した価格の系列だけである。
出典と更新
本ページで扱う系列の出典・単位・収録期間・最終取得を列挙する。値は公表元から月に2回取り込み直している。