アルミ溶接は酸化皮膜と熱伝導率の高さが原因で、母材清掃と電流調整を誤ると溶け込み不足や気孔が発生する。TIG溶接での交流設定とシールドガス管理が成否を分ける。
アルミ溶接で最初に詰まるのは母材表面の酸化皮膜処理だ
アルミ溶接で初心者が直面しやすい失敗は、ビード表面に黒い筋が入る現象と、見た目には問題がないにもかかわらずX線検査で内部に気孔が並ぶ不良であり、どちらも母材表面の酸化皮膜を除去しないまま溶接を始めたことに起因するため、外観だけで判断すると原因の切り分けを誤りやすい。酸化皮膜は融点が約2000℃で、アルミ母材の融点660℃を大きく上回るため、溶接時には皮膜だけが残ってビード内に巻き込まれる。
教科書では「溶接直前にステンレスブラシで清掃する」と書かれるが、実際の現場ではステンレスブラシの選択を誤って鉄用ブラシを使い、鉄粉がアルミ表面に付着して電食の原因になるという回り道は珍しくなく、そのためアルミ専用のステンレスブラシを用意し、溶接開始30分以内に清掃を完了させる運用が現実的な管理点となる。さらに、清掃後に手で触れると皮脂が再付着するため、作業者は溶接直前まで手袋を外さない手順で進めたほうが不良の再発を抑えやすい。
もうひとつの失敗は、母材を削り過ぎて表面に傷をつけ、そこから水素が入り込んで気孔を招くパターンである。酸化皮膜は厚さ数μm程度にとどまる。力を入れて削る必要はない。軽くブラシを当てて表面の光沢が変わる程度で十分となる。
なぜアルミは鉄やステンレスより溶接が難しいのか
アルミ溶接の難しさは、物性の3つの特異性に起因する。第一に酸化皮膜の融点が母材より高い点、第二に熱伝導率が鉄の約3倍ある点、第三に水素溶解度が液体と固体で数十倍変化する点であり、これらが別々に問題を起こすのではなく、溶融池の形成から凝固まで連続して重なり合うため、鉄系材料では起きにくい現象が一工程の中で立て続けに現れる構造となっている。
酸化皮膜が溶融池に浮かず巻き込まれる
アルミの酸化皮膜(酸化アルミニウム)は融点が約2000℃で、母材の融点660℃を大きく超える。通常の溶接入熱では皮膜だけが固体のまま残る。その結果、溶融池の中に浮遊し、冷却時にビード内部へ取り込まれる。鉄系材料ではスラグが比重差で浮上して分離するが、アルミでは皮膜の比重が母材と近いため浮上せず、そのまま欠陥になりやすい。
TIG溶接で交流を使う理由はここにあり、交流のプラス半サイクルではタングステン電極から電子が放出されて母材表面の酸化皮膜に衝突し、物理的に破砕する作用(クリーニング作用)が働くため、溶接中に皮膜を除去しながら溶融池を形成できるが、直流ではその働きが弱く、見た目以上に皮膜が残りやすい。この差があるため、アルミ溶接では交流TIGが標準となっている。
熱伝導率が高く入熱不足で溶け込まない
アルミの熱伝導率は約237W/(m·K)で、鉄の約80W/(m·K)に比べて約3倍高い。投入した熱が溶接部から周囲へ逃げる速度が速い。そのため、同じ電流で溶接しても鉄ほど溶け込まない。板厚が増すほど熱の逃げ道が広がるため、溶け込み不足はより顕著になる。
現場で「アルミは溶けない」と感じる作業者の多くは、鉄と同じ感覚で電流を設定して入熱不足に陥っており、アルミでは鉄より高めの電流設定が必要になるうえ、特に板厚5mm以上では予熱を併用しないと始端部の溶け込みが確保しにくく、開始直後だけ不安定になることも多い。予熱温度は母材の熱容量次第だが、手で触れてほんのり温かい程度(50〜100℃程度)でも効果が見て取れる。
水素溶解度の差で気孔が発生する
アルミは液体状態では水素をよく溶かすが、固体になると溶解度が急激に低下する。溶接中に溶融池が水素を吸収する。そして、凝固時に溶解しきれなくなった水素がガスとして析出し、気孔になる。水素の供給源は、母材表面の水分・油分、大気中の湿気、シールドガス中の微量水分などである。
鉄系材料でも水素起因の割れは問題になるが、アルミでは割れではなく気孔として現れる点が異なり、しかも気孔は外観検査では見えず、X線検査や超音波探傷で初めて判明するため、施工後に原因を追うほど手戻りが大きくなりやすい。母材清掃、シールドガス純度、溶接速度のどれか一つだけを整えても十分とは限らず、3要素を並行して管理したときに欠陥率の低下が見えやすくなる。
アルミTIG溶接の正しい手順
アルミ溶接はTIG溶接が主流であり、交流電源とアルゴンシールドガスを使った手順が標準となっている。以下では板厚3mm程度の突合せ溶接を例に取り、実務での手順を示す。
Step 1: 母材の清掃と開先確認
溶接開始30分以内に、母材表面をアルミ専用ステンレスブラシで清掃する。ブラシは鉄用と共用しない。アルミ専用品を用意する。清掃範囲は溶接線から両側20mm以上とし、表面の光沢が変わるまで軽く擦る。力を入れて削ると傷が入り、そこから水素が侵入するため注意が要る。
清掃後はアセトンまたはイソプロピルアルコールで脱脂する。油分が残ると気孔の原因になるため、ウエスに溶剤を含ませて拭き取り、溶剤が揮発するまで待つ必要がある。揮発前に溶接を始めると、溶剤蒸気が溶融池に巻き込まれる。
開先形状を確認する。板厚3mm以下ではI形開先(開先なし)が一般的だが、板厚が増すとV形開先やレ形開先が必要になるため、板厚条件に応じて事前確認を行う。開先角度は広めに取り、ルートギャップは板厚に応じて適切に設定するのが目安であり、ギャップが広すぎると溶け落ちが発生し、狭すぎると溶け込み不足になる。
Step 2: 溶接機の設定
TIG溶接機を交流モードに設定する。アルミ溶接では交流のクリーニング作用が不可欠である。直流では酸化皮膜を除去できない。交流周波数は標準的な60Hzで問題ないが、機種によっては周波数可変機能があり、高周波数(100Hz以上)にするとアーク集中性が高まってビード幅が狭くなる。
電流値は板厚と溶接姿勢で決める。下向き姿勢で板厚3mmなら、電流は100〜120A程度が目安になる。立向きや横向きでは電流を下げる。そのうえで、溶融池が垂れないよう調整する。アルミは熱伝導率が高いため、鉄より高めの電流が必要になる点を見落とすと、見かけ上はビードが載っていても内部では溶け込みが浅いという結果になりやすい。
シールドガスは純アルゴンを使用する。流量は10〜15L/分程度で、風の影響を受けやすい屋外では流量を増やす必要がある。ヘリウム混合ガスを使うと入熱が増して溶け込みが深くなるが、コストが高く、扱いの変化も小さくないため、初心者には純アルゴンのほうが扱いやすい。
タングステン電極は純タングステンまたはジルコニア入りタングステンを選ぶ。交流では電極先端を半球状に整形する必要がある。直流用の尖った形状では使えない。電極径は板厚に応じて選び、板厚3mmなら2.4mmまたは3.2mm径が適する。
Step 3: 溶接の実施
トーチを母材に対して垂直に近い角度(80〜85度)で構え、アークを起動する。アルミは熱伝導率が高いため、始端部では入熱が不足しやすい。したがって、アーク起動後は数秒間その場でアークを保持し、母材が十分に加熱されてから前進する流れになる。
溶加棒は溶融池の前方から供給し、タングステン電極に触れないよう注意する。電極に触れるとタングステンがアルミに混入し、黒い異物としてビード内に残る。溶加棒の送り速度は溶融池の大きさを見ながら調整する。池が広がりすぎないよう制御する必要がある。
溶接速度は鉄より遅めにする。アルミは熱伝導率が高く、速く進めすぎると入熱不足で溶け込まない。ビード幅が母材厚の2〜3倍程度になるよう速度を調整し、溶融池の形状が楕円形になって後端がわずかに凹む状態を目安にすると、速度と入熱の釣り合いを崩しにくく、結果として安定した施工につながる。
終端部ではクレーター処理を確実に行う。アークを急に切ると終端に凹みが残る。そこから割れが発生しやすい。電流を徐々に下げながらアークを切る機能(ダウンスロープ)を使い、溶加棒で凹みを埋めてから終了する。
Step 4: 冷却と検査
溶接後は自然冷却する。アルミは熱膨張率が鉄の約2倍あり、急冷すると変形や割れが発生しやすい。水冷は厳禁である。風を当てるのも避ける。室温まで冷却した後、ビード外観を確認する。
外観検査では、ビード表面の黒ずみ・クレーター・アンダーカットの有無を確認する。黒ずみは酸化皮膜の巻き込みまたはシールド不良を示す。クレーターは終端処理の不足を示す。アンダーカットは電流過大または運棒速度の不適を示す。
内部欠陥(気孔・溶け込み不足)は外観では判別できないため、X線検査または超音波探傷が必要になり、JIS Z 3104(アルミニウム溶接部の放射線透過試験方法及び透過写真の等級分類方法)に基づいて判定したうえで、許容される欠陥レベルを超える場合は補修または再溶接を行う。
前提条件と必要な道具
アルミTIG溶接を実施するには、以下の条件と道具が必要になる。
溶接機と周辺設備
交流出力が可能なTIG溶接機が必須だ。直流専用機ではアルミ溶接ができない。機種によっては交流周波数・バランス調整・パルス機能などが搭載されており、これらを活用すると溶接品質が安定する。
シールドガスは純アルゴンを用意する。ボンベは高圧ガス保安法に基づく管理が必要であり、転倒防止措置と換気の確保が義務づけられるため、設備面の準備が不十分なまま作業に入ると、溶接条件以前の段階で安全管理に穴が生じる。流量計付き調整器を取り付け、流量を正確に制御できるようにする。
タングステン電極はアルミ専用品(純タングステンまたはジルコニア入り)を用意する。先端形状は半球状に整形する必要がある。ベンチグラインダまたは電極研削機で成形する。直流用の尖った形状では、交流溶接時にアークが不安定になる。
母材と溶加棒
母材のアルミ合金種類に応じて溶加棒を選定する。A5052やA5083などの5000系合金にはA5356溶加棒、A6061などの6000系合金にはA4043溶加棒を使うのが一般的であり、溶加棒の選定を誤ると高温割れや耐食性低下が発生するため、JIS Z 3232(アルミニウム溶接用溶加棒及びソリッドワイヤ)を参照して適合する種類を選ぶ。
母材は入荷時にビニール被覆されている場合が多いが、被覆を剥がした後は速やかに溶接するか、清掃後にラップで包んで酸化を防ぐ。アルミは空気中で急速に酸化皮膜を形成する。したがって、清掃から溶接までの時間は短いほどよい。
清掃用具と保護具
アルミ専用ステンレスブラシを用意する。鉄用ブラシと共用すると鉄粉が付着して電食を招くため、必ず専用品を用意する。脱脂にはアセトンまたはイソプロピルアルコールを使い、油分・水分を完全に除去する。
溶接時の保護具として、遮光度10〜12番の溶接面、革手袋、長袖の難燃作業服が必要であり、アルミ溶接は紫外線量が多く、遮光度が低いと目の炎症(電気性眼炎)を起こしやすい一方で、換気装置または局所排気装置を設置しなければ溶接ヒュームの吸入リスクも高まる。労働安全衛生法により、溶接ヒュームはマンガンとして特定化学物質に指定されており、屋内作業では濃度測定と換気管理が義務づけられる。
プロと初心者の差が出るポイント
アルミ溶接で経験者と初心者の差が顕著に現れるのは、溶融池の観察と電流調整の精度であり、初心者はアーク長と溶加棒送りに意識が集中して溶融池の形状変化を見落としやすい一方、熟練者は溶融池の形・色・揺れを継続的に観察し、わずかな変化から入熱過不足を判断して電流を微調整している。
溶融池の色と形状で入熱を判断する
アルミの溶融池は銀白色で光沢があり、適正な入熱では楕円形に広がる。入熱が不足すると池が小さく丸いままで、溶け込みが浅くなる。入熱が過大だと池が広がりすぎて制御不能になり、溶け落ちやアンダーカットが発生する。
熟練者は溶融池の後端の形状を重視する。後端がわずかに凹んで波打つ状態が理想的である。この状態では溶け込みが十分に確保される。後端が平坦なままだと入熱不足であり、大きく凹んで垂れ下がるようなら入熱過大と判断する。
クリーニング幅で交流バランスを調整する
交流TIG溶接機には、プラス半サイクルとマイナス半サイクルの時間比率を調整する「バランス調整」機能がある。プラス側の比率を増やすとクリーニング作用が強まる。一方で、酸化皮膜の除去能力が向上する反面、タングステン電極への負荷が増え、電極先端が丸く溶損しやすくなる。
熟練者はビード周辺のクリーニング幅(溶接線の両側に現れる銀白色の帯)を見てバランスを調整し、クリーニング幅が狭すぎる場合はプラス側比率を増やし、電極が過度に溶損する場合は減らすが、初心者は機械の初期設定のまま使い続けることが多く、母材の状態に応じた調整を行わないため、皮膜除去不足や電極消耗が頻発する。
溶加棒の送り方で気孔を防ぐ
溶加棒を溶融池に押し込むように送ると、シールドガスの流れが乱れて大気が巻き込まれ、気孔が発生しやすい。熟練者は溶加棒を溶融池の前方から静かに供給する。池の表面に触れる程度の力加減で送る。溶加棒が池に入る瞬間の「ジュッ」という音を聞き分け、音が大きくなったら送り速度を落とす。
初心者は溶加棒を一定速度で送り続け、溶融池の変化に応じた調整を行わないため、溶加棒が過剰に供給されて余盛が高くなるか、不足して溶け込み不足になることが多く、溶融池の大きさと溶加棒送り速度を連動させる技術が、気孔と溶け込み不良の双方を抑える要点となる。
現場での判断基準
アルミ溶接の品質は、施工後の検査だけでなく、溶接中のリアルタイム判断で決まる。以下に現場で使われる判断基準を示す。
アーク音で入熱の適否を判断する
適正な入熱では、アーク音は「シューッ」という連続した柔らかい音になる。入熱が不足すると音が途切れがちで「バチバチ」と弾ける音が混じる。入熱が過大だと音が大きく「ゴーッ」という低音になり、溶融池が揺れて不安定になる。
ベテラン溶接工は、アーク音を聞いただけで電流の過不足を判断し、フットペダルまたはリモコンで電流を微調整する。初心者は視覚情報に頼りがちだが、アーク光で目が疲れると観察精度が落ちるため、音の変化も合わせて拾えるかどうかで修正の早さに差が出る。
ビード裏面の色で酸化の有無を判断する
裏波溶接または片面溶接では、ビード裏面の色で酸化の程度を判断できる。裏面が銀白色なら酸化がほぼない。シールドが十分に効いている状態である。裏面が灰色や黒色なら酸化が進行しており、シールドガス不足または大気の巻き込みが発生している。
裏面シールドを行う場合は、裏当てガスとして純アルゴンを流し、裏面も大気から遮断する必要があり、流量は表面シールドの半分程度で足りる一方、ガスの流し始めから溶接終了まで継続して流さなければならない。途中で止めると酸化が一気に進行するため、表面だけ整って見える状態でも裏面品質は崩れうる。
母材の反りで熱歪みを予測する
アルミは熱膨張率が鉄の約2倍あり、溶接後の反りや歪みが大きくなりやすい。特に薄板(板厚2mm以下)では、溶接線に沿って凸状に反る変形が顕著だ。
現場では、溶接前に母材を逆方向に予変形させておき、溶接後の反りで平坦になるよう調整する手法が使われるが、溶接治具で拘束する方法もあり、どちらか一方だけで片づくとは限らない。拘束が強すぎると溶接部に残留応力が蓄積して割れの原因になるため、拘束と逆変形のバランスを経験に基づいて見極める場面が多い。
溶接後の冷却速度で割れを防ぐ
5000系アルミ合金(A5052、A5083など)は、溶接後の冷却速度が速すぎると高温割れが発生しやすい。特に板厚が厚い場合や拘束度が高い場合は、溶接線に沿った縦割れが入る。
現場では、溶接後に毛布や断熱材でビード周辺を覆い、冷却速度を緩やかにする対策が取られるが、急冷を避けることで割れのリスクは下がる一方、冷却時間が長くなるため作業効率との兼ね合いが生じる。割れは目視で確認できる場合もあるが、微細な割れは浸透探傷試験(PT)で検出する。
アルミ溶接の代替手法と使い分け
TIG溶接以外にも、アルミの接合には複数の手法がある。現場では用途・板厚・要求品質に応じて使い分けが行われる。
MIG溶接(半自動溶接)
MIG溶接は、ワイヤを自動送給しながらアルゴンシールドガス中でアークを発生させる半自動溶接法であり、TIG溶接より溶接速度が速く、生産性が高いため、造船・車両・建築などの大型構造物で多用される。
アルミMIG溶接では、ワイヤ送給速度と電流が連動するため、送給速度の設定が品質を左右する。送給速度が速すぎるとスパッタが増える。遅すぎると溶け込み不足になる。ワイヤ径は1.2mmまたは1.6mmが標準で、板厚に応じて選定する。
MIG溶接はTIGに比べて入熱が大きく、薄板では溶け落ちが発生しやすい。板厚3mm以下ではTIG溶接が優先される。板厚5mm以上ではMIG溶接が選ばれることが多い。
摩擦攪拌接合(FSW)
摩擦攪拌接合は、回転するツールを母材に押し付けて摩擦熱で軟化させ、材料を攪拌して接合する固相接合法であり、溶融を伴わないため溶接欠陥(気孔・割れ)が発生せず、継手強度が高いことから、鉄道車両・航空機・船舶などの高品質接合に採用される。
FSWは専用の工作機械が必要で、設備投資が大きいため、少量生産や現場施工には向かない。また、接合線が直線または単純な曲線に限られ、複雑な形状の接合には適用できない。TIG溶接やMIG溶接と使い分けが必要だ。
ろう付
ろう付は、母材より融点の低いろう材を溶かして接合する方法で、母材自体は溶融しない。アルミろう付では、フラックスを使う方法と、真空または不活性ガス雰囲気で行う方法がある。熱交換器・ラジエーター・配管などの接合に使われる。
ろう付は母材の希釈が起きないため、異種金属の接合にも適用できる。ただし、継手強度は溶接に比べて低く、高応力部位には適さないうえ、ろう付後の加熱処理が必要になる場合もあり、接合そのものは成立しても工程全体では負担が増える点が課題として残る。
アルミと異種金属の接合
アルミと鉄・ステンレスなど異種金属を溶融溶接することは、物性の違いから実質不可能だ。融点・熱伝導率・熱膨張率が大きく異なるため、溶融池が形成されない。無理に溶接すると、脆い金属間化合物が生成して強度が著しく低下する。
異種金属接合には、爆発圧接・摩擦攪拌接合・ろう付・機械的接合(リベット・ボルト)などの代替手法が使われ、爆発圧接は火薬の爆発圧力で金属を衝突させて接合する方法として船舶のアルミ上部構造と鋼船体の接合に実績がある一方、摩擦攪拌接合も固相接合のため異種金属に適用可能だが、ツール摩耗が課題となる。
ろう付では、アルミ側にアルミろう、鉄側に銅ろうを使い、中間層で接合する方法が取られる。機械的接合は最も確実である。一方で、重量増加と応力集中が欠点となる。用途・要求強度・コストを総合的に判断して手法を選ぶ段取りとなる。
よくあるトラブルと対処法
アルミ溶接で頻発するトラブルと、その原因・対処法を以下にまとめる。
気孔が内部に並ぶ
気孔は水素が原因で発生する。母材表面の水分・油分、大気中の湿気、シールドガス中の微量水分が供給源になる。対処法は、母材清掃の徹底、シールドガス純度の確認、溶接速度の適正化であり、溶接速度が速すぎると溶融池の滞留時間が短くなって水素が抜ける前に凝固するため、速度を遅くすることで気孔が減少する場合がある。
溶け込み不足
溶け込み不足は入熱不足が原因だ。電流が低すぎる、溶接速度が速すぎる、予熱が不足している、などが考えられる。対処法は電流を上げる、速度を遅くする、予熱を行う、などである。板厚が厚い場合は開先加工を行い、ルート間隔を適切に設定することで溶け込みを確保する。
ビード表面に黒い筋が入る
黒い筋は酸化皮膜の巻き込みまたはタングステン混入が原因だ。酸化皮膜が原因なら、母材清掃が不十分か、交流バランス調整でプラス側比率が不足している。タングステン混入なら、溶加棒が電極に接触している。対処法は清掃の徹底、バランス調整の見直し、溶加棒送りの改善である。
アンダーカットが発生する
アンダーカットは電流過大または運棒速度が速すぎることが原因だ。溶融池が広がりすぎて母材が溶けすぎ、ビード端部に溝が残る。対処法は電流を下げる、速度を遅くする、トーチ角度を調整する、などである。立向きや横向き姿勢では、重力の影響でアンダーカットが出やすいため、電流を大きく下げる必要がある。
終端にクレーターが残る
クレーターはアークを急に切ることで発生する。終端部は冷却速度が速い。そのため、クレーターから割れが進展しやすい。対処法は、溶接機のダウンスロープ機能を使って電流を徐々に下げる、溶加棒で凹みを埋めてから終了する、などであり、ダウンスロープ時間は1〜2秒程度が目安になる。
アルミ溶接の品質管理と検査
アルミ溶接の品質は外観検査と非破壊検査で評価される。外観検査ではビード形状・色・クレーター・アンダーカット・スパッタ付着などを目視で確認する。JIS Z 3060(鋼溶接部の外観試験方法及び判定基準)はアルミに直接適用されないが、判定基準の考え方は参考になる。
内部欠陥は放射線透過試験(RT)または超音波探傷試験(UT)で検出する。アルミはX線透過性が高いため、鉄より低いエネルギーで撮影できる。JIS Z 3104にアルミニウム溶接部の放射線透過試験方法が規定されており、欠陥の種類と等級が定義されている。
超音波探傷はリアルタイムで検査できる利点があるが、アルミは音響減衰が大きく、厚板では検出感度が低下するため、表面から5mm以内の浅い欠陥は検出が難しく、放射線透過試験との併用が推奨される。
溶接後の寸法検査では、反り・歪み・角度ずれを測定する。アルミは熱膨張率が大きい。そのため、溶接後の寸法変化を予測して治具設計・組立順序を決める必要があり、大型構造物では、溶接順序を工夫して歪みを相殺する手法が取られる。
この記事は「溶接の資格ガイド」の関連記事です。溶接に関する体系的な知識はこちらのガイドをご覧ください。









