溶接記号の構成要素
矢・矢の折れ・基線・尾・補助記号 / JIS Z 3021:2016
溶接の種類ごとの記号ではなく、記号を組み立てる部品を条番号つきで確かめるページ。各要素に、規定から外れた誤読の例をひとつずつ添える。
矢
- 矢は、溶接される継手を示す引出し線である(3.3)。継手を構成する可視線を指して接触させ、基線に角度をもって連結し、先端に矢尻を付ける(4.6.1)。
- 矢は基線のどちらの端に連結してもよい。角度は45°で表すが、60°などでもよく、一群の図面では統一する。矢尻は塗りつぶしでも傘形でもよい(4.6.1)。
- 溶接が同じであれば、一本の基線に複数の矢を付けてもよい(4.6.2)。溶接記号は、継手の矢の側に記載するのが望ましい(4.1)。
矢は基線の左端にしか付けられないか。
付けられる端は限られない。矢は基線のどちらの端に連結してもよい(4.6.1)。角度も45°に限らず60°などでもよく、一群の図面の中で統一すればよい。
矢の折れ
- T継手を除く突合せ溶接で、レ形開先・J形開先など開先を取る側を示さなければならないときは、矢を折って開先を取る部材を示す(4.6.3)。
- 開先を取る部材が明らかな場合や、どちらの部材でもよい場合は、矢を折らなくてよい(4.6.3)。T継手はこの規定の対象外である。
- 基本記号の左右の向きは変えてはならない(4.4.1)。開先を取る側は、記号の向きではなく矢の折れで示す。
開先を取る側を示すために、レ形の記号を左右反転して描いてよいか。
描いてはならない。基本記号の左右の向きは変えてはならず(4.4.1)、開先を取る側は矢を折って示す(4.6.3)。
基線と上下
- 基線は、基本記号が配置される線である(3.4)。基本記号は基線の中央に添える(4.4.1)。
- 矢の側を溶接するときは基本記号を基線の下側に置く。基本記号が基線の上か下かが、溶接される側を決める(4.7.2.1)。
- プラグ溶接・スロット溶接・スポット溶接・シーム溶接・プロジェクション溶接で、溶接が部材の接触面になされるときは、基本記号を基線の中央に置く。この場合は矢の側・反対側とは無関係である(4.7.2.2)。
- 基線は製図の図枠の底辺に平行に描く。それができないときに限り、右側辺に平行に描いてよい。このとき記号は90°回転する(4.7.1)。
スポット溶接の記号が基線をまたいで描かれているとき、矢の側と反対側のどちらを溶接するか。
どちらとも読まない。溶接が部材の接触面になされるときは基本記号を基線の中央に置き、矢の側・反対側とは無関係になる(4.7.2.2)。
尾
- 尾は、基線の矢と反対側の端部に付けられる<形の要素である(3.5)。
- 尾には補足的指示として、a) 品質等級、b) 溶接方法、c) 溶接材料、d) 溶接姿勢(JIS Z 3011 による)、e) その他を記載する。複数の情報は斜線(/)で区切って列挙する(4.8)。
- WPS・WPQR などの文書を指示するときは、閉じた尾を用いる(4.8)。
- 同じ補足的指示を一枚の製図の中で繰り返すことは避け、共通の注記を設ける(4.8)。
溶接方法が同じなら、すべての溶接記号の尾に毎回書くべきか。
書かない。同じ補足的指示を一枚の製図で繰り返すことは避け、共通の注記を設ける(4.8)。
全周溶接
- 全周溶接記号は、矢と基線の交点に付ける。片側・両側を問わず、継手を一周する連続した溶接を示す(4.5.2)。
- 次の場合は全周溶接記号を用いない。a) 始点と終点が同じでない、b) 溶接の種類が異なる、c) 寸法が異なる(4.5.2)。
- 中空断面の周溶接や、スロット溶接の周溶接には用いない(4.5.2)。
途中で溶接の種類が変わる継手に、全周溶接記号を使ってよいか。
使わない。溶接の種類が異なる場合、始点と終点が同じでない場合、寸法が異なる場合は、全周溶接記号を用いない(4.5.2)。
二点間溶接
- 二点間溶接記号は、始点と終点が同じでない溶接に用いる。始点と終点は明確に示す(4.5.3)。
- 始点と終点が同じでない溶接には全周溶接記号を用いないため(4.5.2)、範囲は二点間溶接記号で示す。
部材をほぼ一周するが、始点と終点が一致しない溶接を全周溶接記号で示してよいか。
示さない。始点と終点が同じでない場合は全周溶接記号を用いず(4.5.2)、二点間溶接記号を使って始点と終点を明確に示す(4.5.3)。
現場溶接
- 現場溶接は、据付け場所など工場建屋外で施工する溶接である(3.22)。
- 現場溶接記号は、矢と基線の交点に、基線と直角かつ上方に向けて、右向きに描く(4.5.4・表3 注f)。
- 全周溶接記号と組み合わせる場合にも、同じ描き方を適用する(4.5.4)。
現場溶接の旗は、左向きや下向きに描いてもよいか。
よくない。現場溶接記号は、基線と直角かつ上方に、右向きに描く(4.5.4)。
簡易溶接記号(タック溶接の位置)
- 簡易溶接記号は、矢・基線・尾で構成する。継手の詳細は不要で、溶接の位置だけを指示するときに用いる(4.2)。
- 規格の注記では、タック溶接の位置を示すのによく用いられるとしている(4.2)。
基本記号の無い溶接記号から、開先の形状を読み取れるか。
読み取れない。簡易溶接記号は溶接の位置だけを指示するもので、継手の詳細は含まない(4.2)。
多段基線
- 多段基線では、最初の作業を矢尻に最も近い基線で指示し、引き続く作業を順次ほかの基線で指示する(4.7.3)。
多段基線は、上の基線から順に作業すると読むか。
読まない。最初の作業は矢尻に最も近い基線で指示し、続く作業を順次ほかの基線で指示する(4.7.3)。
補助記号の位置(裏側の記号・表面形状・仕上げ方法)
- 裏溶接・裏当て溶接・裏波溶接・裏当て(取り外す/取り外さない)・消耗インサート材の補助記号は、基線に対して基本記号の反対側に付ける(表3 注e))。
- 裏波溶接記号は、片側突合せ溶接でルート側の完全溶込みが要求される場合に用い、基線に対して基本記号の反対側に付ける(4.5.5)。
- 表面形状(平ら・凸・凹)と仕上げ方法(G・M・C・P)の補助記号は、基線の反対側ではなく、基本記号に近接して記載する(4.5.1.A)。
裏波溶接記号を、V形の記号と同じ側に重ねて描いてよいか。
描かない。裏波溶接記号は、基線に対して基本記号の反対側に付ける(4.5.5)。
出典と免責事項
- 本ページの記号の定義・配置ルールは JIS Z 3021:2016「溶接記号」に基づく。掲載図はすべて MONOSCOPE 編集部による自作図であり、規格本文・図表の転載ではない。
- 実際の設計・製作では、正式な規定として規格原本を参照すること。規格は 日本産業標準調査会(JISC) の閲覧サービスで確認できる。
- 図面の解釈・施工要領は、各社の設計基準や発注者の仕様書が優先される場合がある。本ページは学習・確認用のリファレンスとして提供するものであり、内容の正確性・完全性を保証しない。
本ページの該当条項:JIS Z 3021:2016 3.3・3.4・3.5・3.22・4.1・4.2・4.4.1・4.5.1.A・4.5.2・4.5.3・4.5.4・4.5.5・4.6.1・4.6.2・4.6.3・4.7.1・4.7.2.1・4.7.2.2・4.7.3・4.8・表3 注e)・注f)
最終確認日:2026-10-14