アルミ溶接棒は母材と溶加材の組成の適合性で選ぶ。A4043とA5356の使い分けを誤ると高温割れや強度不足が発生する。

被覆アーク溶接棒の感覚でアルミ溶接棒を選ぶと、割れと強度不足を招く

鉄の被覆アーク溶接棒に慣れた作業者がアルミ溶接棒を選ぶとき、最初に詰まるのは組成の適合性であり、鉄の溶接棒が母材が軟鋼なら「E4316」「E4303」など被覆剤の種別で選べるのに対して、アルミ溶接棒は母材のアルミ合金系列(5000系、6000系など)と溶加材の組成が合わないだけで、高温割れや母材希釈による強度低下が現実に発生する。

教科書ではアルミ溶接棒として「A4043(Al-Si系)」と「A5356(Al-Mg系)」の2種類が紹介される。だが現場では、母材が5083(Al-Mg系)なのにA4043を使ってしまい、溶接後にビードが割れるという失敗が珍しくない。逆に6061(Al-Mg-Si系)にA5356を使うと、溶着金属のMg含有量が過多になり耐食性が低下する。被覆アーク溶接棒のように「とりあえず汎用品」という考え方は、アルミ溶接棒では通用しない。

アルミ溶接棒の選定は、母材の合金系列と溶接後の要求性能(強度・耐食性・延性)を照合する作業であり、この照合を省くと施工後の割れ検査や引張試験で不合格となり、やり直しによって工数と材料を失うため、選定段階の確認不足がそのまま後工程の損失へつながる。

アルミ溶接棒選定の全体像:母材組成と溶加材の適合表から逆算する

アルミ溶接棒の選定は以下の4ステップで進む。

  1. 母材の合金系列を特定する(1000系、5000系、6000系など)
  2. 溶接後の要求性能を確認する(強度優先か、耐食性優先か)
  3. 適合する溶加材組成を選ぶ(A4043、A5356、A5183など)
  4. 溶接法に応じた形態を選ぶ(TIG溶接用棒、MIG溶接用ワイヤ)

ステップ1の母材特定では、材料証明書や母材の刻印を確認する。アルミ合金の系列番号(例:5083のように4桁の数字)は、最初の1桁目で主要添加元素が分かる。5000系ならMg系、6000系ならMg-Si系、7000系ならZn系である。この系列情報がなければ、溶加材の選定は始まらない。

ステップ2の要求性能は、溶接継手に求められる機械的性質で判断する。強度が必要なら母材に近い組成の溶加材を選び、耐食性や延性が必要なら組成を調整する。たとえば5083同士の溶接で強度を優先するならA5356を使い、耐食性を優先するならA5183を使う。

ステップ3の適合表は、AWS(米国溶接協会)やJIS Z 3232(アルミニウム溶加棒及びソリッドワイヤ)に記載されている組み合わせ表を参照するものであり、この表には母材と溶加材の組み合わせごとに割れ感受性と機械的性質が示されているため、表に「×」印がある組み合わせは高温割れのリスクが高いものとして実務では外す判断となる。

ステップ4は溶接法によって形態が変わる。TIG溶接なら棒状の溶加棒、MIG溶接またはMAG溶接ならワイヤ状の溶加材を選ぶ。被覆アーク溶接棒のように被覆剤がついた形態は、アルミ溶接には存在しない。アルミは酸化皮膜が強固であり、被覆剤では十分に保護できないため、シールドガス(アルゴン)による雰囲気遮断が前提となっている。

母材と溶加材の適合表の読み方

適合表は縦軸に母材の系列、横軸に溶加材の組成を配置した二次元マトリクスであり、交点にある記号で適合性を判定する。「○」は適合、「△」は条件付き適合、「×」は不適合を示す。たとえば5083(母材)とA4043(溶加材)の交点は「×」になっている。これは高温割れの可能性が高いことを意味する。

適合表には割れ感受性のほかに、溶着金属の引張強さと伸びの目安も併記されている。5083にA5356を使った場合、溶着金属の引張強さは母材に近い水準を保てるが、6061にA5356を使うと引張強さは母材より低くなる。この差は母材希釈率(溶融池に母材が溶け込む割合)と溶加材の組成バランスで決まる。

A4043とA5356の使い分け基準と割れ感受性の違い

アルミ溶接棒の選定で最も頻繁に使われるのはA4043とA5356であり、この2種類は組成と性質が正反対であるため、流動性を優先するのか、母材に近い強度と耐食性を優先するのかで判断軸が変わり、使い分けを誤ると割れや強度不足へ直結する。

A4043の組成と適用範囲

A4043はAl-Si系の溶加材で、Si(ケイ素)を添加して融点を下げた合金だ。融点が低いため流動性が良く、ビードの形成がしやすい。母材との適合性は6000系(Al-Mg-Si系)と相性が良い。6061や6063の溶接に使われる。

A4043の利点は溶接中のビード形成の容易さにあり、流動性が高いため薄板や複雑な形状の溶接でもビードが平滑に仕上がる。一方で、母材がMg系(5000系)の場合は溶融池でMgとSiが反応してMg2Si相を形成し、高温割れの起点になりやすいため、5083や5052にA4043を使うと冷却過程でビードに縦割れが入るリスクが高まる。

A5356の組成と適用範囲

A5356はAl-Mg系の溶加材で、Mgを添加して強度と耐食性を高めた合金だ。母材との適合性は5000系(Al-Mg系)と相性が良い。5083や5086の溶接に使われる。

A5356の利点は、母材に近い組成を保てるため溶着金属の引張強さが母材の水準を維持しやすい点にある。5083同士の溶接で用いれば継手強度は母材の引張強さに近づくが、融点はA4043より高く流動性が劣るため、電流設定や運棒速度を外すとビード表面に凹凸が残りやすい。

割れ感受性の判定方法

割れ感受性は溶接金属の組成バランスで決まる。アルミ合金の高温割れは、凝固過程で生じる液相の残留が原因だ。この液相は低融点共晶相(たとえばMg2Si)として粒界に集まり、冷却時の収縮応力で割れを引き起こす。

割れ感受性を判定する指標として、溶着金属のMg/Si比が使われる。Mg/Si比が特定の範囲(おおむね1.0〜1.7程度)に入ると、低融点共晶相が形成されやすくなり割れ感受性が高くなる。A4043はSiが多くMgが少ないため比が低く、5000系母材と組み合わせると比が危険域に入る。A5356はMgが多くSiが少ないため、5000系母材と組み合わせても比は安全域に収まる。

母材の系列別にみるアルミ溶接棒の選定手順

母材の系列ごとに、適合する溶加材と選定理由を整理する。

1000系(純アルミニウム系)の溶接棒選定

1000系は純度が高く、添加元素がほとんど含まれない。溶加材はA1100やA1070など、母材に近い純アルミ系を選ぶ。強度は低いが延性と耐食性が高い。板金加工や装飾用途で使われる。

1000系の溶接では、母材と溶加材の組成差が小さいため割れ感受性は低いが、熱伝導率が非常に高く入熱量の管理が難しいため、予熱で母材温度を上げずに進めると溶融池が広がらず、結果として溶け込み不足に陥りやすい。

5000系(Al-Mg系)の溶接棒選定

5000系はMgを添加した非熱処理型合金で、強度と耐食性のバランスが良い。溶加材はA5356やA5183を使う。母材が5083ならA5356、母材が5052ならA5183が標準的な選択だ。

5000系の溶接では、母材のMg含有量に応じて溶加材を使い分ける。母材のMg含有量が高い場合、溶加材も高Mgのものを選ぶと継手強度が保ちやすい。母材のMg含有量が低い場合、溶加材のMg含有量を下げて割れ感受性を低減する。

6000系(Al-Mg-Si系)の溶接棒選定

6000系はMgとSiを添加した熱処理型合金で、押出成形や構造材に使われる。溶加材はA4043が標準的だ。母材が6061や6063の場合、A4043を使えば流動性が良く、ビード形成が容易になる。

6000系の溶接では、溶接後の熱処理が必要になる場面が多い。溶接熱で母材の熱処理状態(T6など)が失われて継手部の強度が低下するため、溶接後に溶体化処理と時効硬化処理を施せば母材に近い強度を回復できる一方で、熱処理設備がない現場溶接では強度低下を前提に設計することになる。

7000系(Al-Zn系)の溶接棒選定

7000系はZnとMgを添加した高強度合金で、航空機や高負荷構造に使われる。溶加材はA5356やA5183を使うが、母材の高強度を溶接継手で再現するのは困難だ。溶接熱で母材の析出硬化が消失し、継手部の強度が母材の半分程度まで低下する。

7000系の溶接は、継手設計で強度低下を織り込む必要がある。母材の引張強さが高くても、溶接継手の引張強さは溶加材の水準に近づく。設計上は溶接継手を避けるか、リベット接合や機械的接合を併用する構造が選ばれる。

TIG溶接棒とMIG溶接ワイヤの形態の違いと使い分け

アルミ溶接棒は溶接法に応じて形態が異なり、TIG溶接では棒状の溶加棒、MIG溶接では巻線状のワイヤを使うため、同じ組成(たとえばA5356)であっても形態が変われば供給方法と操作手順が変わり、作業者に求められる制御の仕方も別物となる。

TIG溶接棒の形態と供給方法

TIG溶接棒は直径1.6mm〜3.2mm程度の棒状で、長さは1000mm前後だ。作業者が手で溶融池に送り込む。被覆アーク溶接棒のように被覆剤はなく、表面は金属光沢のままだ。

TIG溶接棒の利点は、溶加材の送り量を作業者が直接制御できる点にある。薄板や精密な溶接では、溶融池の大きさに応じて溶加棒を少しずつ送ることで余盛高さと溶け込み深さを調整できるが、送り速度が遅いため長尺の溶接や大入熱の溶接には向かない。

MIG溶接ワイヤの形態と供給方法

MIG溶接ワイヤは直径0.8mm〜1.6mm程度の巻線で、スプール(巻枠)に巻かれている。ワイヤ送給装置で自動送りされ、溶接トーチから連続的に供給される。

MIG溶接ワイヤの利点は、ワイヤ送給速度を機械で制御できるため溶接速度が速く長尺の溶接に適している点だが、アルミはワイヤが軟らかく送給中に座屈しやすいため、送給経路を短くし、ライナー(送給チューブの内張り)にテフロンなど低摩擦材を使って座屈を抑える必要がある。

溶接前の母材表面処理とアルミ専用工具の使い分け

アルミ溶接では、母材表面の酸化皮膜と油脂の除去が前提になる。酸化皮膜(Al2O3)は融点が2000℃を超え、母材の融点(約660℃)より大幅に高い。酸化皮膜が残ったまま溶接すると、溶融池に酸化物が巻き込まれて気孔や溶け込み不良を引き起こす。

アルミ専用ワイヤブラシによる表面処理

表面処理にはアルミ専用のステンレスワイヤブラシを使う。鉄用のワイヤブラシを使うと、ブラシに付着した鉄粉が母材に転写され、溶接後に錆や腐食の起点になる。アルミ専用ブラシは鉄との接触歴がないため、鉄粉混入のリスクがない。

ブラシ掛けは溶接線に沿って一方向に行う。往復運動で擦ると、酸化皮膜が母材表面に擦り込まれて逆効果だ。ブラシの毛先で酸化皮膜を削り取るように、母材に対して45度程度の角度で押し付ける。

溶剤による脱脂処理

油脂の除去にはアセトンやイソプロピルアルコールを使う。油脂が残ると溶融池に巻き込まれ、水素ガスとして気孔の原因になる。脱脂処理は清浄なウエスに溶剤を含ませ、溶接線の両側を拭き取る。ウエスは使い捨てにし、繰り返し使うと逆に油脂を塗り広げる。

TIG溶接でのアルミ溶接棒の送り方と交流設定の調整

TIG溶接でアルミを溶接する場合、交流出力と溶加棒の送り方が品質を左右する。直流出力では酸化皮膜の除去が不十分で溶け込み不良が発生しやすい一方、交流出力なら陰極クリーニング作用(酸化皮膜を電気的に破砕する現象)が働くため、酸化皮膜を除去しながら溶接を進められる。

交流バランス調整の意味

交流バランスは、プラス極性とマイナス極性の時間比率を調整する機能だ。プラス極性の時間を長くすると陰極クリーニング作用が強まり、酸化皮膜の除去効果が高まる。しかしタングステン電極への入熱が増え、電極先端が溶損しやすくなる。マイナス極性の時間を長くすると溶け込み深さが増すが、酸化皮膜の除去効果は弱まる。

アルミの溶接では、バランス調整をプラス側に寄せるのが一般的であり、酸化皮膜が厚い場合や母材が厚い場合はプラス極性の比率を高めて除去を優先し、薄板や精密溶接ではプラス極性を抑えてタングステン電極の寿命を延ばすというように、条件ごとに狙いを分けて調整することになる。

溶加棒の送り角度と溶融池への投入タイミング

溶加棒は溶融池の前方から送り込む。トーチの進行方向に対して溶加棒を15度〜30度の角度で傾け、溶融池の先端に棒を突き込む。溶融池の中央や後方に棒を入れると、溶融金属が飛散してビード形状が乱れる。

溶加棒の送りは断続的に行う。溶融池が形成されたら棒を少し送り込み、溶融したら引き戻す。この動作をリズミカルに繰り返すことで、余盛高さを均一に保つ。送り量が多すぎると余盛が高くなり、少なすぎると溶け込み不足になる。

MIG溶接でのワイヤ送給速度と電圧の同期調整

MIG溶接ではワイヤ送給速度と電圧を同期させる必要があり、送給速度を上げると溶接電流が増して電圧も連動して上げないとアークが不安定になり、さらにアルミは熱伝導率が高いため入熱量が不足すると溶融池が広がらず、ワイヤが母材表面で団子状に固まりやすい。

スプレー移行モードへの移行電流

MIG溶接には短絡移行とスプレー移行の2つのモードがある。アルミ溶接ではスプレー移行が標準だ。スプレー移行は溶滴が微細化してアークが安定し、スパッタが少ない。ただし移行モードに入るには、一定以上の電流が必要だ。電流が不足すると短絡移行になり、スパッタが増えてビード表面が粗くなる。

移行電流は使用するワイヤ径とシールドガスの組成で変わる。ワイヤ径が太いほど移行電流は高くなる。シールドガスが純アルゴンの場合、移行電流は比較的低く抑えられる。ヘリウム混合ガスを使うと移行電流は上がるが、入熱量が増して厚板の溶接に向く。

ワイヤ送給経路の座屈対策

アルミワイヤは軟らかく、送給経路で座屈しやすい。座屈を防ぐには送給経路を短くし、ライナーの内径をワイヤ径に対して適切に選ぶ。ライナー内径が大きすぎるとワイヤが蛇行し、小さすぎるとワイヤが詰まる。

送給ローラーの圧力調整も重要であり、圧力が強すぎるとワイヤが押し潰され、弱すぎるとスリップして送給速度が不安定になるため、アルミ用の送給ローラーに採用されるU字溝の形状を活かしながら、押し潰さずに送る条件へ詰める必要がある。

溶接後の検査でビード割れと気孔を見分ける方法

アルミ溶接後の検査では、ビード表面の割れと気孔を見分ける。割れは凝固過程の応力集中が原因で、気孔は水素ガスや酸化物の巻き込みが原因だ。両者は外観と発生位置で区別できる。

高温割れの外観と発生位置

高温割れはビードの中央に沿って縦方向に走る。割れの幅は細く、深さはビード全体に及ぶ。母材と溶加材の組成が不適合な場合(たとえば5083にA4043を使った場合)に発生しやすい。

高温割れを防ぐには、母材と溶加材の適合表を確認し、割れ感受性の低い組み合わせを選ぶ必要がある。すでに溶接してしまった場合は割れ部分を完全に除去してから再溶接するべきであり、割れを残したまま上盛り溶接しても進展を止められず、最終的に破断へつながる。

気孔の外観と発生位置

気孔はビード表面に点状の穴として現れる。穴の直径は1mm以下が多く、ビード全体に散在する。気孔の内部は球形の空洞で、水素ガスが凝固時に逃げ場を失って残留したものだ。

気孔を防ぐには、母材表面の油脂と酸化皮膜を除去し、シールドガスの流量を適正に保つ必要があり、流量が少ないと大気が混入して酸化物が生成される一方、流量が多すぎてもガス流が乱れて逆に大気を巻き込むため、トーチ先端から母材までの距離(ノズル高さ)も含めて管理することになる。

異種アルミ合金同士の溶接で溶加材を選ぶ判断基準

異種アルミ合金同士を溶接する場合、溶加材は両方の母材に適合する組成を選ぶ必要があり、たとえば5083(Al-Mg系)と6061(Al-Mg-Si系)を溶接する場合はA5356を使うが、これは5083に適合し、6061にも使用できる一方で強度は低下する。

適合表で両母材の交点を確認する

異種合金溶接の適合表では、縦軸と横軸の両方に母材を配置し、交点の溶加材候補を確認する。5083と6061の組み合わせでは、交点にA5356が記載されている。A4043は6061には適合するが5083には不適合なため、選択肢から外れる。

適合する溶加材が複数ある場合、優先順位は要求性能で決める。強度優先ならA5356、流動性優先ならA4043を選ぶ。ただし両母材に適合しない組み合わせは避ける。

母材希釈率と溶着金属の組成予測

異種合金溶接では、母材希釈率(溶融池に母材が溶け込む割合)が溶着金属の組成を左右する。希釈率が高いと母材の影響が強まり、低いと溶加材の組成に近づく。

希釈率は入熱量と開先形状で変わり、入熱量が大きく開先角度が狭いと母材の溶け込みが深くなって希釈率が上がる一方、入熱量を抑えて開先角度を広げると希釈率は下がるため、溶着金属の組成を設計値に近づけたい場合はこの関係を踏まえた条件設定が必要となる。

アルミ溶接棒の保管方法と湿気吸着による品質劣化の防止

アルミ溶接棒は表面に酸化皮膜が形成されやすく、湿気を吸着すると溶接中に気孔が発生するため、保管時は密閉容器に入れ、乾燥剤を併用して湿度を下げる管理が欠かせない。

開封後の保管期限と再乾燥処理

開封後の溶接棒は湿気を吸いやすく、保管期限は環境によって変わる。湿度が高い現場では数日で吸湿し、気孔が出やすくなる。吸湿した溶接棒は再乾燥処理で回復できる場合もあるが、表面の酸化皮膜が厚くなると効果は限定的だ。

再乾燥処理は乾燥炉で低温加熱する。加熱温度が高すぎると溶接棒の組成が変化し、低すぎると水分が抜けない。加熱時間も重要で、時間が短いと内部の水分が残り、長すぎると酸化が進む。

使用直前のワイヤブラシ処理

保管中に形成された酸化皮膜は、使用直前にワイヤブラシで除去する。ブラシ掛けは溶接棒の軸方向に一方向で行い、酸化皮膜を削り取る。ブラシ後は素手で触らず、清浄な手袋を着用して扱う。皮脂が付着すると溶接中に気孔の原因になる。

次にやるべきこと:手持ちの母材の系列確認と適合表の入手

アルミ溶接棒の選定を始めるなら、まず手持ちの母材の合金系列を確認することが先決であり、材料証明書や母材の刻印から系列番号を特定したうえで、JIS Z 3232の適合表を入手し、日本溶接協会(JWES)の資料や溶接材料メーカーのカタログと照合して候補を絞る流れとなる。

適合表を見ながら、母材と溶加材の組み合わせで割れ感受性が低く、要求性能を満たす溶加材を選ぶ。最初は小さな試験片で溶接し、ビード外観と割れの有無を確認する。試験溶接で問題がなければ本溶接に進み、問題があれば溶加材を変更して再試験する。この手順を踏めば、高温割れと気孔のリスクを大幅に下げられる。