スポット溶接は電極加圧と通電時間の制御で品質が決まる。電流が過大ならスパッタとへこみ、圧力不足なら散り出しとナゲット径不足を招く。

スポット溶接で最初に詰まるのは電流と加圧力のバランスだ

スポット溶接を教科書どおりに設定したにもかかわらず、散り(スパッタ)が出たり接合強度が安定しなかったりすることは珍しくなく、原因は単純な設定ミスというより、電流と加圧力の組み合わせが現場条件に対して噛み合っていない点にある。

教科書には「板厚1mmあたり何kA」という標準電流が載っているが、これは電極先端径・母材の表面状態・冷却水温が理想条件であることを前提としており、現場では電極が摩耗していたり母材に油膜や酸化皮膜が残っていたりするため、同じ電流値でも接触抵抗が変動し、散りや未溶着が頻発する。

加圧力も同様である。圧力が不足すると板間に隙間が残り、通電初期に火花が飛んで散りが出る。逆に過大だと電極が食い込み、へこみやシワが残る。板厚・母材材質・電極形状の3つで最適値が変わるため、一律の数値では対応しきれない。

もう一つの壁は通電時間であり、短すぎればナゲット(溶融核)が十分に形成されず、長すぎれば母材が焼けて穴が開くため、時間管理は電流・加圧力と連動しており、単独で決められない構造となっている。

この手順を知らなかった頃と知った後の違い

手順を知らなかった頃は、散りが出るたびに電流を下げ、接合不良が出たら電流を上げる試行錯誤を繰り返しがちであり、その結果として電極寿命が短くなって打点ごとに品質がばらつき、検査で不合格となって再溶接や廃却が続くという回り道は珍しくない。

手順を知った後は、電流・加圧力・通電時間を板厚と母材に応じて段階的に設定し、試験片で確認してから本溶接に入るため、散りやナゲット径の変動が減るのみならず電極交換サイクルも安定し、JIS Z 3140(抵抗スポット溶接継手)の品質基準を満たす打点が継続的に得られるようになる。

スポット溶接の手順と全体像

スポット溶接の基本動作は「加圧→通電→保持→開放」の4段階であり、この順序は変えられない。母材を電極で挟み込み、加圧してから通電することで接触抵抗を安定させ、溶融池を形成する。通電を停止した後も加圧を保持し、溶融部を冷却してナゲットを固化させる。開放後は電極を持ち上げ、次の打点に移動する。

手順の全体像を段階ごとに示す。

加圧段階(プレッシャータイム)

母材を重ね、電極で挟み込んで規定の加圧力をかける。この段階で板間の隙間をなくし、接触抵抗を安定させることが狙いであり、加圧が不十分だと通電時に火花が飛んで散りが出やすくなり、後工程で電流だけを調整しても根本改善に至らないことが多い。

通電段階(ウェルドタイム)

電極間に交流または直流の大電流を流し、接触部の抵抗発熱で母材を溶融させる。溶融部はナゲットと呼ばれる球状の溶融核を形成し、両母材を一体化する。通電時間が短ければナゲット径が不足し、長ければ母材が焼けて穴が開く。

保持段階(ホールドタイム)

通電を停止した後も加圧を維持し、溶融池を急冷する。冷却中に加圧を解除するとナゲット内部に割れや収縮孔が生じるため、保持時間の確保は欠かせず、保持が短い条件は一見するとサイクル短縮に見えても、接合強度の低下という形で後から問題化しやすい。

開放段階

加圧を解除し、電極を持ち上げる。母材表面に電極痕が残るが、過度に深い場合は加圧力か電極先端径を見直す必要がある。

この4段階の制御が溶接品質を左右し、電流・加圧力・各段階の時間を板厚と母材材質に応じて調整したうえで試験片により確認してから本溶接へ移る流れが、実務では再現性を確保しやすい進め方となっている。

各段階の詳細と調整ポイント

加圧力の設定と調整

加圧力は板厚と電極先端径で決まる。薄板では加圧力が過大だと電極が食い込んでへこみが残り、厚板では不足すると通電初期に散りが出る。JIS Z 3140では板厚範囲ごとに推奨加圧力が示されているが、これは電極先端径と母材材質が標準的な場合の目安だ。

現場では電極の摩耗で先端径が拡大すると接触面積が増えて実効加圧力が低下するため、設定値だけを見ていても実際の押さえ込み状態は変わってしまい、定期的に電極先端をドレッシング(研磨)して先端径を維持する必要が生じる。

加圧力の確認には加圧力計を使う。エアシリンダ式の溶接機では空気圧を調整して加圧力を制御するが、圧力計の指示値と実際の加圧力にズレが生じることがあるため、定期的に校正し、実測値と設定値を照合する作業が欠かせない。

電流値の決定と微調整

電流値は板厚・母材材質・電極先端径の3つで決まる。薄板では電流が過大だと母材が焼けて穴が開き、厚板では不足するとナゲット径が小さくなり接合強度が低下する。

電流の調整は通電時間と連動する。電流を上げれば通電時間を短縮でき、電流を下げれば通電時間を延ばして補えるが、通電時間を過度に延ばすと電極寿命が短くなり、冷却不足で割れが生じやすくなるため、単純な置き換えでは済まない。

母材に亜鉛めっきやアルミめっきが施されている場合、めっき層が接触抵抗を高めるため、電流を上げるか通電時間を延ばす必要があり、めっき鋼板のスポット溶接ではJIS Z 3140に加えてJIS Z 3253(めっき鋼板の抵抗スポット溶接継手)の規定を参照する。

通電時間の管理

通電時間は板厚と電流値で決まる。薄板では短時間で十分なナゲットが形成されるが、厚板では熱が拡散しやすいため通電時間を延ばす。ただし長すぎると母材が焼けて電極先端が溶損する。

通電時間の単位はサイクル(50Hzまたは60Hzの交流1周期)またはミリ秒で表す。交流式の溶接機ではサイクル単位で設定することが多く、直流式ではミリ秒単位で設定する。

試験片で通電時間を段階的に変えて溶接し、ナゲット径を確認する必要があり、ナゲット径は母材を引き剥がして測定するか超音波探傷で非破壊検査し、JIS Z 3140で規定された板厚ごとの最小ナゲット径を満たす条件を採用する。

保持時間と冷却管理

保持時間は溶融池の冷却に必要な時間だ。通電停止後も加圧を維持し、ナゲットが固化するまで待つ。保持が短いとナゲット内部に収縮孔や割れが残り、接合強度が低下する。

保持時間は板厚と冷却速度で決まる。厚板では熱容量が大きいため保持時間を延ばす必要があるが、過度に延ばすと生産性が低下する。実務では通電時間の半分から同程度の保持時間を設定し、試験片で接合強度を確認する。

電極の冷却水温も冷却速度に影響する。冷却水温が高いと冷却速度が低下し、保持時間を延ばさなければならない。冷却水温は20〜25℃に保つのが標準だが、夏場は水温管理に注意が必要であり、この条件変動が保持設定の見直しにつながることもある。

道具と設備の前提条件

スポット溶接機の種類と選定

スポット溶接機は電源方式で交流式・直流式・インバータ式に分類される。交流式は構造が単純で安価だが、電流制御の精度が低く、薄板や高張力鋼では散りが出やすい。直流式は電流制御の精度が高く、散りが少ないが、設備費が高い。インバータ式は交流を整流してから高周波で制御するため、電流精度と応答速度が高く、めっき鋼板や異材接合に適している。

加圧方式ではエアシリンダ式・油圧式・サーボモータ式がある。エアシリンダ式は構造が単純で保守が容易だが、加圧力の微調整が難しい。油圧式は大きな加圧力が得られるため厚板の溶接に向くが、油漏れや騒音の管理が必要だ。サーボモータ式は加圧力を電子制御でき、位置決め精度も高いが、設備費が高い。

溶接機の選定では母材の板厚・材質・生産量を考慮する必要があり、薄板の量産ではインバータ式とサーボモータ式の組み合わせが効率的である一方、厚板の少量生産では交流式とエアシリンダ式でも十分な場合があるため、設備能力と要求品質の釣り合いを見極めることになる。

電極の形状と材質

電極は先端形状で平面電極・ドーム電極・R電極に分類される。平面電極は接触面積が広く加圧力が分散するため、厚板や高張力鋼に用いる。ドーム電極は接触面積が小さく電流密度が高いため、薄板や低炭素鋼に用いる。R電極は先端に丸みがあり、母材への食い込みが少ないため、外観が重視される部位に用いる。

電極材質は純銅・クロム銅・ベリリウム銅がある。純銅は導電性が高いが軟質で摩耗しやすく、薄板の短時間溶接に限られる。クロム銅は硬度と導電性のバランスが良く、一般的な鋼板のスポット溶接で最も多く使われる。ベリリウム銅は硬度が高く耐摩耗性に優れるため、めっき鋼板や高張力鋼に用いるが、価格が高い。

電極の先端径は板厚の2倍から3倍が目安であり、先端径が小さいと電流密度が高くなって散りが出やすく、大きいと電流密度が低くなってナゲット径が不足するため、使用に伴う摩耗で径が拡大することを前提に、定期的なドレッシングと打点数による管理が必要となる。

試験片と品質確認の方法

本溶接の前に試験片で条件を確認するのが実務の基本だ。試験片は本溶接と同じ母材・板厚・表面処理を用い、電流・加圧力・通電時間を段階的に変えて溶接する。溶接後は引きはがし試験またはせん断試験で接合強度を確認し、母材破断が生じる条件を採用する。

引きはがし試験ではナゲット径と破断モードを確認する。ナゲット径がJIS Z 3140の最小値を満たし、かつナゲット周辺の母材が破断する(プラグ破断)条件が適正だ。界面破断が生じる場合は電流または通電時間が不足しており、条件の見直しが必要になる。

非破壊検査では超音波探傷を用いてナゲット径を測定する。超音波探触子を打点上に当て、反射波の強度と位置からナゲット径を推定する。破壊試験に比べて精度は劣るが、本溶接品の全数検査が可能であるため、量産現場の品質管理手段として活用される場面が多い。

現場で応用するコツと注意点

母材の表面処理と前処理

母材表面に油膜・酸化皮膜・塗装が残っていると接触抵抗が変動し、散りや未溶着の原因になる。油膜は脱脂剤で除去し、酸化皮膜はワイヤブラシまたはサンダで削り取る。塗装は溶接部をマスキングして塗装を避けるか、塗装後に溶接部を剥離する。

めっき鋼板では亜鉛めっき層が溶接時に蒸発し、電極表面に付着する。これを「合金化」と呼び、電極寿命を短縮する原因になる。めっき鋼板の溶接では電流を上げてめっき層を素早く溶融させ、合金化を抑制する。電極の冷却水流量を増やして電極温度を下げることも有効だ。

打点配置と間隔の管理

スポット溶接では打点の配置と間隔が接合強度に影響する。打点間隔が狭すぎると先行打点の熱影響で電流が分流し、後続打点のナゲット径が小さくなる。これを「シャント」と呼ぶ。シャントを防ぐには打点間隔を板厚の20倍以上に保つのが標準だが、生産性の都合で狭くせざるを得ない場合は電流を上げて補う。

打点が端部に近いと母材が変形しやすく、電極が滑って位置がずれる。端部からの距離は板厚の10倍以上を確保するのが原則だが、設計上困難な場合は治具で母材を押さえて変形を抑制する必要があり、配置設計と溶接条件を切り離して考えられない点が見て取れる。

異材接合と高張力鋼の溶接

鋼板とステンレス鋼、鋼板とアルミニウム合金など異材の組み合わせでは、融点と熱伝導率の差により溶接条件の設定が難しくなる。融点の低い材料側が先に溶融し、融点の高い材料側で溶け込みが不足する。電極配置を工夫し、融点の高い材料側に大きな電極を配置して電流密度を下げることで、両材料の溶融タイミングを合わせる。

高張力鋼では炭素当量が高く、溶接後の冷却速度が速いと焼入れ硬化してナゲット部に割れが生じるため、通電後の保持時間を延ばして冷却速度を下げるか、追加の通電によるテンパリングを行って硬さを下げる必要があり、JIS Z 3140に加えて自動車工業会の規格(JASO)や鉄鋼メーカーの技術資料も参照対象となる。

自動化とロボット溶接への展開

スポット溶接は自動化に適した接合法だ。溶接ロボットに溶接ガンを取り付け、打点座標を教示することで連続溶接が可能になる。自動車のボディ組立では数百点のスポット溶接をロボットで行い、生産性と品質の安定化を実現している。

ロボット溶接では電極の位置決め精度が重要だ。位置ずれが大きいと打点が母材の端部にかかり、散りや未溶着が生じる。ロボットの位置決め精度は±0.1mm以下が求められるため、定期的にキャリブレーション(校正)を行う。

また、電極の摩耗を監視して自動でドレッシングを行うシステムも導入されており、電極先端径をレーザセンサで測定して規定値を超えたらドレッシング装置で研磨することで、電極交換の頻度を減らし、稼働率の維持につなげている。

品質トラブルと対処の実例

散りが頻発する場合、まず電流と加圧力を確認する。電流が高すぎるか加圧力が不足している可能性が高い。電流を下げて通電時間を延ばすか、加圧力を上げて接触抵抗を安定させる。

接合強度が低い場合はナゲット径を確認する。ナゲット径が不足していれば電流または通電時間を増やし、ナゲット径は十分だが界面破断が生じる場合は母材の表面処理や電極の汚れを疑う。

電極の寿命が短い場合は冷却水の流量と水温を確認する必要があり、流量不足や水温上昇は電極の過熱を招いて摩耗を早め、さらに冷却水配管の詰まりやポンプの劣化が原因になることもあるため、条件調整だけでなく定期点検まで含めて対処することになる。

現場のベテランが重視する判断基準

ベテランのスポット溶接工は「音と火花でおおよその良否が分かる」と言う。通電時の音が「パチッ」と乾いた短い音なら正常で、「バチバチ」と連続音が出れば散りが発生している。火花が飛ばず、音も小さければ電流または加圧力が不足している。

電極痕の深さも判断材料だ。痕が浅すぎれば加圧力不足、深すぎれば加圧力過大または電流過大を疑う。痕の周辺に変色や焼けがあれば通電時間が長すぎる。

結論からいえば、スポット溶接の品質は電流・加圧力・通電時間の3要素を母材と板厚に応じて最適化し、試験片で確認してから本溶接に入ることで安定し、教科書の標準値はあくまで目安にとどまるため、現場条件に合わせた微調整と一つずつ条件を変えて検証する地道な確認作業が品質安定の基盤となる。