ティーチングは、溶接ロボットに動作の順序・位置・速度を教え込む作業を指す。現場では「ティーチング」「教示」と呼ばれるが、労働安全衛生規則はこれを「教示等」という業務として定義し、条件によっては特別教育の対象にしている。方式によって作業者がロボットのどこに立つか、駆動源が入っているかが変わるため、必要な教育の判断も方式と作業の中身で決まる。このページでは、ティーチングの3方式と、法令上の「教示等」との対応を整理する。

この記事のポイント

  • ティーチングは、溶接ロボットに動作の順序・位置・速度を設定・変更・確認する作業だ。労働安全衛生規則第36条第31号はこれを「教示等」として定義している。
  • 方式はオンライン・オフライン・ダイレクトの3つに大別できる。ロボットの実機を動かすか、パソコン上で作るかが分かれ目になる。
  • 特別教育の対象になる条件は2つ。可動範囲内で行うことと、駆動源を遮断していないことだ。第31号は駆動源を遮断して行うものを対象から除いている。
  • 可動範囲内で教示等を行う作業者と共同して、可動範囲外で機器操作を行う者も同じ号の対象に含まれる。
  • 教示等の特別教育は学科7時間以上+実技3時間以上=計10時間以上(安全衛生特別教育規程 第18条)。

法令上の「教示等」とは

労働安全衛生規則第36条第31号は、産業用ロボットの可動範囲内で行う、マニプレータの動作の順序・位置・速度の設定、変更または確認を「教示等」と定めている。現場でティーチングと呼んでいる作業は、この定義に重なる。

条文の対象は作業の呼び名ではなく中身で決まる。溶接の軌跡を作る作業でも、溶接後に動作を確認する作業でも、可動範囲内でマニプレータの動作の順序・位置・速度に触れるなら同じ「教示等」に入る。「設定」だけでなく「変更」と「確認」まで含まれている点は見落としやすい。

なお、産業用ロボットの可動範囲内で行う検査・修理・調整とその結果の確認は、同条第32号の「検査等」として別に定められている。教示等に該当するものは第32号から除かれるため、2つの号は重ならない形で切り分けられている。制度全体の整理は産業用ロボット特別教育で扱う。

ティーチングの3方式

オンラインティーチング(ティーチングプレイバック)

実機を実際に動かして位置を記憶させる方式だ。作業者がティーチングペンダントを操作してマニプレータを目的の姿勢まで動かし、その点を教示点として登録する。溶接線に沿って点を拾い、溶接条件と動作の順序を組み立てていく。

実機とワークを見ながら位置を決められるため、治具の据わりやワークの個体差を反映しやすい。一方で、教示中はその設備を生産に使えない。作業者がロボットの近くで操作する場面が多く、可動範囲内に立ち入る形になりやすい方式でもある。

オフラインティーチング

パソコン上の3D空間でロボットとワークのモデルを動かし、動作プログラムを作る方式だ。作成したプログラムを実機に転送して使う。設備を止めずに教示作業を進められる点が、オンラインとの最大の違いになる。

ただし、モデル上の座標と現場の実際の据付位置はずれる。転送したプログラムをそのまま流せることは少なく、実機で位置を合わせ込む調整が入る。この調整を可動範囲内で駆動源を入れたまま行うなら、その作業は教示等に当たる。オフラインで作ったから対象外になる、という整理にはならない。

ダイレクトティーチング

作業者がマニプレータを直接手で持って動かし、その軌跡や姿勢を記憶させる方式だ。ペンダントの操作を介さず、動かしたい形をそのまま教えられる。

作業者がロボットに触れる前提の方式であるため、可動範囲内に入って行うことになる。駆動源を遮断せずに行う場合、条文上は教示等の要件に当たる。

特別教育が必要になる条件

労働安全衛生規則第36条第31号から、教示等が特別教育の対象になる条件は次のように読める。

条件

内容

作業場所

産業用ロボットの可動範囲内であること

駆動源

駆動源を遮断して行うものは対象から除かれる

作業内容

マニプレータの動作の順序・位置・速度の設定・変更・確認

共同作業者

可動範囲内の作業者と共同して可動範囲外で行う機器操作を含む

方式そのもので決まるのではなく、可動範囲内かどうかと駆動源を遮断しているかどうかで決まる。オフラインティーチングでも、実機での合わせ込みを可動範囲内で駆動源を入れたまま行うなら、その作業は教示等に入る。逆に、駆動源を遮断して行う教示は第31号の対象から外れる。

ここで注意したいのは、除外規定は「教育が要らない」という意味であって、「危険がない」という意味ではない点だ。除外に当たるかどうかの判断は条文と所管の解釈にもとづくため、個別の作業の該当判断は所管(労働基準監督署等)に確認すること。

教示等の特別教育の科目と時間

教示等の特別教育の科目と時間は、安全衛生特別教育規程 第18条で定められている。

区分

科目

時間

学科

産業用ロボットに関する知識

2時間以上

学科

産業用ロボットの教示等の作業に関する知識

4時間以上

学科

関係法令

1時間以上

実技

産業用ロボットの操作の方法

1時間以上

実技

産業用ロボットの教示等の作業の方法

2時間以上

学科は計7時間以上、実技は計3時間以上、合わせて計10時間以上になる。可動範囲内で行う検査・修理・調整(検査等)は別の教育で、そちらは計13時間以上だ。両方の作業を担当するなら、それぞれの教育が要る。

溶接の現場でティーチングを担う人

ティーチングは、溶接ロボットを動かす側の中心的な作業に当たる。溶接そのものの技量とは別に、教示点の取り方や溶接条件の組み立てを扱う仕事になる。溶接工からロボットを扱う側へ移る場合の仕事の中身と、必要になる教育の組み合わせは溶接ロボットオペレーターで整理している。

出典・集計方法・最終確認日

  • 教示等・検査等の定義と除外規定:労働安全衛生規則(第36条第31号・第32号)|e-Gov法令検索|https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 |参照2026-08-05
  • 教示等の科目と時間(学科7時間以上+実技3時間以上=計10時間以上)/検査等(計13時間以上):安全衛生特別教育規程(第18条・第19条)|厚生労働省 法令等データベース|https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74085000&dataType=0 |参照2026-08-05
  • 集計方法:法令上の定義・除外規定・科目・時間は、いずれもe-Gov法令検索および厚生労働省の一次情報にもとづく。ティーチング3方式の区分は方式の技術的な特徴による整理であり、方式別の導入台数・普及率・工数の増減については、集計軸のそろった一次情報を確認できなかったため記載していない。
  • 最終確認日(lastVerified):2026-08-05 集計:MONOSCOPE編集部