鋳物に生じる巣はガス巣と引け巣の二系統に分かれる。ガスを脱ぎきる工程と、凝固の順序を押湯で制御する設計が防止の要点だ。
鋳巣を見逃した製品が削り工程で内部空洞を露出させる
鋳造工場で頻発する品質不良の一つが、鋳物の内部にできる空洞である鋳巣であり、外観検査では見つからないにもかかわらず機械加工の途中で突然表面に穴が現れ、削り代を余分に取っていても穴の深さがそれを超えていれば製品は廃却となるため、後工程で初めて不良が顕在化する厄介さを持つ。鋳巣の発生原因は大きく二つに分けられる。一つは溶湯に含まれるガスが固まる際に閉じ込められてできるガス巣であり、もう一つは金属が液体から固体に変わるときに体積が縮んで生じる引け巣だ。
ガス巣は溶湯中の水素や窒素、酸素が気泡として残るものであり、溶解時の脱ガス処理と注湯前の静置が対策の中心になる。引け巣は凝固の進行順序と押湯の配置で決まり、厚肉部が最後に固まる設計では、そこへ溶湯を供給する経路が先に塞がると内部に空洞が残る。教科書では「押湯を最後に固まる位置に置く」と書かれる。だが、製品形状が複雑で最後に固まる部分が複数あり、押湯一つでは足りないという回り道は珍しくない。
鋳巣の防止は、湯口と押湯の配置設計、溶解炉での脱ガス、注湯速度の調整、型の通気性確保という複数の要素を同時に管理する作業となっている。単一工程の改善だけでは効果が限定されやすい。工程間の因果を理解した上で手順を組み立てる視点が欠かせない。
鋳巣の種類を発生機構で分ける
鋳巣は成因によってガス巣と引け巣に大別され、両者は形状も発生位置も異なるうえ対策の方向もまったく違うため、発生機構を混同したまま処置すると対策が空振りに終わることが多く、まず欠陥の性質を見極める整理から着手する必要がある。
ガス巣の特徴と発生位置
ガス巣は溶湯中に溶け込んだガスが、凝固時に気泡として析出して残る空洞だ。形状は球形または楕円形である。内面が滑らかな点が引け巣との見分け方になる。発生位置は製品の上部や、湯の流れが乱れやすい箇所、鋳型の通気が悪い部分に集中する。ねずみ鋳鉄(FC)や球状黒鉛鋳鉄(FCD)では、溶湯中の水素がガス巣の主因になる。アルミニウム合金では水素に加えて酸化物の巻き込みがガスを伴う欠陥を生む。
ガスの供給源は、溶解炉内の雰囲気、装入材に付着した水分や油分、鋳型材料の湿気、中子の結合剤が熱分解して出すガスなど多岐にわたり、しかも溶湯が高温のときはガスを多く溶かし込む一方で温度が下がると溶解度が急減して気泡が発生するため、この性質を利用して溶解後に意図的に温度を下げてガスを浮上させ、表面のスラグと一緒に除去する操作を脱ガスと呼ぶ。
引け巣の特徴と発生位置
引け巣は金属が液体から固体に変わるときに体積が減少し、その分が補給されずに空洞として残る欠陥だ。内面は樹枝状の結晶が突き出た粗い形状になり、ガス巣の滑らかな内面とは明確に異なる。発生位置は製品の中で最も遅く固まる部分、すなわち肉厚が厚い箇所や、複数の肉が合流して熱容量の大きい領域になる。
引け巣は凝固の進行順序で決まり、鋳型に注がれた溶湯は型壁に接した部分から先に冷えて固まり始めるため、薄肉部は早く固まり厚肉部は遅くまで液体のまま残るが、最後に固まる部分へ溶湯を供給する経路が途中で塞がるとその部分の収縮を補う溶湯が届かず内部に空洞ができる。収縮分を補うために設ける溜まりが押湯である。押湯は製品本体より遅く固まるように設計し、製品が固まりきるまで溶湯を供給し続ける役割を持つ。
脱ガス処理と静置で溶湯からガスを除く手順
ガス巣を防ぐ第一段階は、溶解炉で溶湯中のガスを可能な限り減らす作業であり、同じ脱ガスでも溶解法と材質で有効な手順が変わるため、設備条件を無視して一律の操作を当てはめても安定した結果にはつながりにくい。
鉄系材料の脱ガス
鉄鋳物の溶解にはキュポラ、電気炉、高周波誘導炉が使われる。キュポラでは溶湯が炉内を降下する過程で大気と接触し、水素や窒素を吸収しやすい。出湯後の溶湯温度を一定時間保持し、浮上してきたガスとスラグを取鍋の表面から除去する静置が基本になる。静置時間は溶湯量と温度に応じて調整するが、長すぎると温度が下がって注湯作業に支障が出るため、取鍋の保温状態と注湯までの段取りを踏まえて決める。
電気炉や高周波誘導炉では、炉内雰囲気を制御してガスの吸収を抑える方法が使われ、炉蓋を閉じて大気との接触を減らし、必要に応じて不活性ガスや還元性ガスを送り込むことがあるが、それだけで十分とは限らず、溶解後は取鍋に受ける前に表面のスラグを掻き取り、取鍋内でも再度スラグを除去してから注湯に移る流れとなる。
アルミニウム合金の脱ガス
アルミニウム合金は水素の溶解度が高く、固化時に水素が急激に析出してガス巣を生じやすい。脱ガスには窒素や塩素ガスを溶湯中に吹き込んで気泡を発生させ、その気泡に水素を吸着させて浮上除去する方法が広く使われる。ロータリー式脱ガス装置では、回転するロータから微細な気泡を連続的に発生させ、溶湯全体を攪拌しながらガスを除く。
脱ガス後の溶湯は静置して残留スラグを浮上させ、取鍋への移し替え時にフィルターを通して酸化物を濾過するが、フィルターの目の細かさは製品の要求品質で選ぶ一方で、目が細かすぎると湯の流れが悪くなって温度低下や湯回り不良の原因になるため、現場では複数の目の粗さのフィルターを用意し、製品の形状と要求精度に応じて使い分ける。
装入材と型材の水分管理
溶解前の装入材に錆や油分、水分が付いていると、溶解時にガスの発生源になる。装入材は乾燥した場所で保管する。表面の錆や汚れを除去してから炉に入れる。特に戻り材(自社の湯口や押湯、不良品を再溶解するもの)は、砂型の砂が付着していることがあり、そのまま溶解すると砂中の水分がガスを発生させる。戻り材は表面をワイヤブラシや研削で清掃し、必要に応じて予熱してから使う。
鋳型と中子の水分もガスの供給源であり、砂型では結合剤に水ガラスや粘土を使う場合があってこれらは水分を含むため、型を十分に乾燥させずに注湯すると水分が蒸発してガスとなり溶湯に巻き込まれる。中子は内部に空洞があるため乾燥に時間がかかる。中子の乾燥が不十分な状態で使うと、注湯時に中子内部で発生した蒸気が製品内に閉じ込められ、ガス巣の原因になる。中子は造型後に乾燥炉で十分に乾燥させ、湿気の多い環境では保管中に吸湿しないよう密閉容器に入れるか、使用直前まで乾燥炉内に置く。
押湯と湯口の配置で凝固の順序を制御する手順
引け巣を防ぐには、凝固が進む順序を設計段階で決めたうえで最後に固まる部分へ溶湯を供給し続ける経路を確保する必要があり、この制御の道具が押湯と湯口の配置であるため、図面の読み違いがあると後工程での調整だけでは補いきれない。
凝固の進行順序を図面から読む
鋳造工は製品図面を見て、どの部分が早く固まり、どこが最後まで溶湯のまま残るかを予測する。一般に、薄肉部は早く固まる。厚肉部は遅く固まる。肉厚が均一でない製品では、厚い部分が最後に固まる箇所になる。複数の肉が交わる節点や、リブが集まる部分も熱容量が大きく、最後に固まりやすい。
凝固の順序は、型との接触面積、肉厚、溶湯の温度分布、型の蓄熱容量で決まり、砂型は熱伝導率が低く金型は熱伝導率が高いため、同じ肉厚でも砂型では冷却が遅く金型では早く固まるが、ダイカストでは金型が厚く冷却水路で強制冷却するため凝固速度が砂型の数倍から数十倍になり、この冷却速度の違いを踏まえて押湯の大きさと配置を決める。
押湯の大きさと位置を決める基準
押湯は製品本体より遅く固まり、かつ製品が完全に固まるまで液体の溶湯を供給し続ける必要がある。このため押湯の体積は製品の最後に固まる部分より大きくする。押湯の形状は円柱または円錐台が多い。高さと直径の比率で冷却速度を調整する。高さが高いほど表面積が減り、冷却が遅くなる。
押湯の位置は製品の最後に固まる部分の直上または直近に置く必要があり、溶湯は重力で下に流れるため押湯が製品より下にあると供給が止まる一方で、製品が水平に長い形状の場合は両端に押湯を配置するか中央と端に複数の押湯を設ける判断が要る。押湯と製品をつなぐ首の部分(押湯頸)は、製品本体より早く固まらないように断面を太くする。押湯頸が細すぎると、製品が固まりきる前に首が塞がり、引け巣が発生する。
湯口と湯道の配置で溶湯の流れを整える
湯口は溶湯を鋳型に流し込む入口で、湯道は湯口から製品部分までの通路だ。湯口の位置と断面積、湯道の形状は、溶湯の流速と充填時間、型内でのガスの逃げ道を左右する。湯口を製品の最も薄い部分に直接つなぐと、溶湯が高速で流入して型壁を削り、砂の巻き込みや乱流によるガス巻き込みが起きる。湯道を設けて一旦溶湯を減速させ、複数の口から製品部分に流し込む設計が基本になる。
湯道の断面は下流ほど狭くする逆テーパ設計にすると、湯道内の溶湯が常に満たされた状態になり空気の巻き込みを防げるが、湯道が上流ほど狭いと下流で溶湯が飛び散って空気を巻き込み、ガス巣の原因になる。湯口と湯道の合計容積は、製品と押湯の合計より小さくする。湯道内の溶湯は製品より早く固まるため、湯道が大きすぎると材料の歩留まりが悪化し、切断加工の手間も増える。
注湯速度と温度の調整で巣の発生を抑える手順
脱ガスと押湯の配置が適切でも注湯条件が合わなければ巣は発生し、注湯速度が速すぎると湯が跳ねて空気を巻き込む一方、遅すぎると型内で温度が下がって湯回り不良や冷え込みによる引け巣が生じるため、速度と温度は別々にではなく連動条件として詰める必要がある。
注湯速度の決め方
注湯速度は製品の形状、肉厚、型の種類で変わる。薄肉の製品では溶湯が早く冷えるため、短時間で型を満たす必要がある。このため注湯速度を速くする。一方、厚肉の製品では型を満たす時間に余裕があり、速度を抑えて乱流を防ぐ方が優先される。
砂型では型の強度が低く、注湯速度が速すぎると型壁が削れて砂が巻き込まれるが、金型やダイカストでは型が頑丈なため砂型より高速で注湯でき、ダイカストでは射出速度を低速と高速の二段階に分けて最初は低速で湯道を満たし、その後高速に切り替えて製品部分を充填する方法が使われる。低速段階で空気を逃がす。高速段階で湯回りを確保する。
現場では取鍋の傾け角度と傾ける速さで注湯速度を調整する。取鍋を一気に傾けると湯が勢いよく流れ出る。ゆっくり傾けると流量が安定する。熟練した鋳造工は湯口から溢れ出る湯の音と光で充填の進行を判断し、傾け角度を微調整する。湯口から炎が上がるのはガスが燃えている証拠であり、型内の通気が悪いか、溶湯中にガスが多い状態を示す。
注湯温度の調整
注湯温度は材質ごとに適正範囲があり、高すぎると鋳型を損傷し、低すぎると湯回り不良や引け巣が増える。ねずみ鋳鉄(FC)や球状黒鉛鋳鉄(FCD)では、材料の炭素当量と製品の肉厚に応じて温度を決める。炭素当量が高いほど融点が下がり、低い温度でも流動性が保たれる。肉厚が厚い製品では、型内で温度が下がりにくいため、注湯温度を抑えて引けを減らす。薄肉の製品では、温度を高めにして湯回りを確保する。
注湯温度の測定には浸漬式の熱電対や光高温計を使い、浸漬式は取鍋内の溶湯に直接差し込んで測るため精度が高いが熱電対が消耗する一方で、光高温計は溶湯表面の放射温度を測るため非接触で済むものの表面のスラグや酸化膜の影響を受けやすく、現場では両方を併用し、浸漬式で基準温度を確認した後に光高温計で連続的に監視する運用が多い。
型の通気性を確保してガスの逃げ道をつくる手順
溶湯が鋳型に流れ込むと、型内の空気と中子から発生するガスが行き場を失って製品内に閉じ込められ、ガス巣になるため、型の通気性を確保してガスを外に逃がす経路を設ける作業は、脱ガス処理と並ぶ基本条件となる。
砂型の通気性を高める方法
砂型は砂粒の隙間が通気路になる。砂が細かすぎると通気性が下がる。粗すぎると型の表面が荒れて鋳肌が悪くなる。砂の粒度と結合剤の配合で通気性を調整する。結合剤が多すぎると砂粒の隙間が埋まり、通気性が低下する。結合剤が少なすぎると型の強度が不足し、注湯時に型が崩れる。
型の上面や側面に通気孔(ガス抜き穴)を設けてガスの逃げ道を確保するが、通気孔は細い穴を複数開けるか砂を詰めた管を型に埋め込む方法があり、位置は溶湯が最後に到達する部分、すなわち製品の上部や端部に配置する一方で、通気孔が溶湯の流路上にあると溶湯が流れ込んで塞がり、効果が失われる。
中子の通気設計
中子は製品の中空部をつくるために鋳型内に置く砂の芯で、周囲を溶湯に囲まれるため、ガスの逃げ道が限られる。中子の内部に通気路を設ける。中子の端部を型の外に出して大気に開放するか、型の通気孔に接続する。通気路は中子を造型する際に、中心に細い鉄線や樹脂の芯を通し、焼成後に抜き取る方法がある。
中子の結合剤は加熱されると分解してガスを発生し、水ガラス系や有機系の結合剤は発生ガス量が多いため、通気設計が不十分だと製品にガス巣ができるが、発生ガスの少ない結合剤を選ぶか、中子の焼成温度と時間を調整して結合剤を完全に分解させ、ガスを事前に追い出す方法もある。
凝固後の検査で巣の位置と大きさを確認する手順
鋳物が固まった後は、内部の巣を検出して位置と大きさを把握する検査が品質管理の要点となり、外観では見えない内部欠陥を見つける手段は破壊検査と非破壊検査に分かれるため、欠陥の種類と製品条件に応じた使い分けが必要になる。
非破壊検査の方法と使い分け
非破壊検査では製品を壊さずに内部の巣を検出できる。代表的な方法は放射線透過試験(RT)と超音波探傷試験(UT)だ。放射線透過試験はX線またはγ線を鋳物に照射し、透過した放射線をフィルムまたはデジタル検出器で記録する。内部に巣があると、その部分は放射線を通しやすくなり、フィルム上に黒い影として現れる。巣の形状と大きさを画像で確認できるため、ガス巣と引け巣の判別がしやすい。
超音波探傷試験は、超音波を鋳物に入射し、内部の欠陥で反射してくる信号を受信する方法であり、巣の位置は超音波が往復する時間から計算し大きさは反射信号の強さで推定するが、放射線透過試験より検査速度が速く装置が小型で現場に持ち込みやすい一方で、鋳物の組織が粗いと超音波が散乱しやすく信号の判別が難しくなる。ねずみ鋳鉄(FC)は黒鉛が片状に分布して超音波を散乱させるため、超音波探傷には向かない。球状黒鉛鋳鉄(FCD)や鋳鋼は組織が緻密で超音波探傷が使える。
破壊検査による確認
破壊検査では、鋳物を切断または破断して内部を直接観察する。量産の初期段階や、新しい製品の試作時に行われる。切断面を研磨して巣の形状を確認し、顕微鏡で組織を観察して、ガス巣か引け巣かを判定する。ガス巣は内面が滑らかで球形に近く、引け巣は樹枝状の結晶が突き出た不規則な形状だ。
破壊検査の結果は押湯の配置や注湯条件の見直しに使われ、巣の位置が設計段階の予測と一致していれば凝固の順序が意図通りに制御されていることが見て取れるが、予測と異なる位置に巣が出た場合は、型の冷却が不均一だったか、湯口の配置が適切でなかった可能性がある。
よくある失敗と対処法
押湯を増やしても引け巣が減らない
押湯の数を増やしたのに引け巣が消えない事例は、押湯の位置と大きさが適切でない場合に起きる。押湯が製品の最後に固まる部分から離れていると、溶湯の供給経路が途中で塞がり、効果が出ない。製品図面を見直し、肉厚の分布と凝固の順序を再計算する。最後に固まる部分を特定し、その直上または直近に押湯を配置し直す。押湯の体積が不足している場合もある。押湯が製品より先に固まると、製品への溶湯供給が止まる。押湯の高さを増して体積を大きくし、冷却速度を遅くする。
脱ガスしてもガス巣が出る
溶解炉で脱ガス処理をしても、取鍋への移し替えや注湯の過程でガスを再吸収する場合がある。取鍋の内面に錆や水分があると、高温の溶湯と反応して水素が発生する。取鍋は使用前に予熱し、内面を乾燥させる。スラグを掻き取る道具や温度測定用の熱電対も、水分や油分が付いていればガスの供給源になる。道具は清浄に保ち、使用直前に予熱する。
鋳型と中子の水分管理が不十分な場合、注湯時に発生した蒸気が溶湯に巻き込まれ、中子の乾燥が不完全だと中子内部から蒸気が出続けて製品にガス巣ができるため、中子は乾燥炉で十分に乾燥させ、保管環境の湿度を管理する必要がある。梅雨時や高湿度の環境では、乾燥後も吸湿しやすい。使用直前まで乾燥炉に入れておくか、密閉容器で保管する。
薄肉部に湯回り不良と巣が同時に出る
薄肉部で湯回り不良と巣が同時に発生するのは、注湯温度が低いか、注湯速度が遅い場合に起きる。溶湯が型内を流れる間に温度が下がり、薄肉部に到達する前に固まり始める。未充填の部分ができ、その周辺に引け巣やガス巣が残る。注湯温度を高めにするか、注湯速度を速くして型を短時間で満たす。湯口と湯道の設計を見直し、薄肉部への溶湯の流れをスムーズにする配置に変更する。
ダイカストで製品表面に小さな穴が多発する
ダイカストで製品表面に微小な穴が多数出る現象は、金型内の空気が溶湯の射出時に巻き込まれて発生し、射出速度が速すぎると金型内の空気が逃げきれず溶湯と混ざって製品に閉じ込められるため、射出速度を低速と高速の二段階に分けて低速段階で空気を排出し、高速段階で充填を完了する設定に変更する。金型に設けたガス抜きピン(エジェクタピン)の配置と数を増やし、空気の逃げ道を確保する方法もある。
安全上の注意点
溶湯の取り扱いと保護具
溶湯は高温で液体の金属であり、皮膚に触れれば重度の火傷を負う。鋳造工は耐熱性の保護衣、革製の前掛け、手袋、安全靴、顔面を覆うシールド付きのヘルメットまたはゴーグルを着用する。溶湯が跳ねる可能性のある作業では、首周りを覆うネックガードも必要だ。
取鍋や湯道具は使用前に予熱し、水分を完全に除去する必要があり、冷えた道具に溶湯を注ぐと急激な蒸気の発生で溶湯が飛び散るため、溶解炉や取鍋の周囲に水や油、有機物が置かれていないかも確認する。床に水たまりがあると、溶湯がこぼれた際に水蒸気爆発を起こす危険がある。
粉塵と有害ガスの管理
砂型の造型や仕上げ作業では、シリカ(二酸化ケイ素)を含む粉塵が発生する。シリカ粉塵を長期間吸入すると、じん肺の原因になる。作業場所には局所排気装置を設置し、粉塵を吸引して外部に排出する。作業者は防じんマスクを着用し、粉塵の吸入を防ぐ。防じんマスクは規格(国家検定合格品)に適合したものを使い、フィルターは定期的に交換する。
中子の結合剤や塗型剤には有機溶剤やアンモニアを含むものがあり、加熱されると有害なガスを発生するため、作業場所の換気を十分に行い、有機溶剤の蒸気濃度を管理基準以下に保つ必要があり、ガスの種類によっては有機ガス用の防毒マスクが必要になる。
重量物の取り扱い
鋳型、中子、鋳物本体は重量があり、手作業での移動は腰や関節を痛める原因になる。クレーン、ホイスト、フォークリフトを使い、人力での持ち上げを避ける。吊り具やスリングの定格荷重を確認し、過負荷での使用を禁止する。吊り作業では周囲に人がいないことを確認し、合図者を配置して安全を確保する。
次にやるべきこと
鋳巣の防止技術を習得した鋳造工は、次に寸法精度の管理に取り組む段階に入り、鋳物の寸法は型の精度、溶湯の収縮率、凝固時の変形で決まるため、JIS B 0403(鋳造品の寸法公差)を参照して製品ごとの公差等級を確認し、型の設計段階で収縮代を見込み、仕上げ代を含めた寸法を決める作業が求められる。
鋳造の技能を体系的に評価する制度として、技能検定の鋳造技能士があり、複数の等級が設けられ、学科試験と実技試験で構成されるが、実技試験では砂型の造型、溶解、注湯、仕上げの一連の作業を行い、製品の品質と作業の安全性が評価される。根拠法は職業能力開発促進法だ。合格者には厚生労働省から技能士の称号が付与される。資格の取得は、現場での技能の証明と、次の工程への昇格の要件になる場合が多い。
巣は注いだ時点で結果の大半が決まり、型を開けてから対症的に追うだけでは手遅れになりやすいため、鋳造工は脱ガスと押湯の配置、さらに注湯条件を事前に整え、欠陥を後で探す発想ではなく前工程で潰す発想へ重心を置く必要がある。









